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マトリックスを組み直す『Fever 発熱について我々が語るべき幾つかの事柄』

感染症と膠原病では初動のアプローチが異なる

   もともと、感染症と膠原病では初動のアプローチが異なる。膠原病は感染症に比べると疾患数が圧倒的に少なく、病歴が相対的には診断に寄与しにくい。疾患数が少ないためマーカーを網羅的に検査してもそれほど医療経済的にも非効率ではないので、まずは検査、となる。

   感染症の場合は原因微生物は多岐にわたり、それら全てを網羅的に検査するのは医療経済的にはかなり無理筋だし、感度・特異度のことを考えるとかえって混乱を招く可能性が高い(今でもβDとかCMVアンチゲネミアをバンバンだして混乱した診療をしてしまう事例は多い)。また、病原体と感染経路が存在しなければ当該感染症は「絶対に」ありえないので、病歴でかなりの感染症は絞り込むことができる。海外渡航歴のないマラリアはほとんどないし、性交渉なしでSTDになることもない(あるとすれば、そこにはこれまた奇妙な病歴があるに違いない)。

   初動のアプローチがずいぶん違うのであるが、目の前の患者が何者か分からない「現象」の状態では両者の方法論をほどよくミックスしなければならない。

   そういう意味で、各症状について「感染症」「膠原病」「その他」の臨床上の特徴をまとめた表(90p)はとてもユニークで面白いし、年齢別に膠原病を分けた表(182p)とかはぼくみたいな非膠原病屋にとって頭の整理に有用だ。いろいろな分類の切り方を知っていたほうが引き出しのリッチさは増していくし、世界も豊かに見えてくる。Dの疾患どうしの組み合わせで鑑別を考える、というやり方もとてもユニークだ。まあ、ぼくはああいうやり方で両者を比較することはないけれども、それはぼくの世界の切り方が異なるからである(正しさとは、関係ない)。

   ついでに言えば、ぼくは診療でIL-2Rを使うことはないし、活動性結核の診断にツ反やIGRAも使わない。情報量は増えるが、診断には寄与しないからである。スティルを疑えばフェリチンを出すし、CRPもオーダーするけどその使い方はかなり本書とは異なる。CRPは量的吟味をする必要のある検査で、例えば本書455p以降にあるような「陽性」「陰性」という二元論的扱いで切るのはまずい、というのがイワタの意見。CRPが2なのか、20なのかは重要な問題だが、「陽性か」「陰性か」はさしたる問題では無いのである。全体的に、本書は「診断には寄与しないし、デシジョンメーキングにも影響を与えないのだけれど、疾患には特徴的な検査」を多用する傾向がある。PETの使い方なんかがその一例だ。まあ、ひとつの流派と考えるべきなのだろう。ぼくはイラチなので、診断に時間をかけたりお金をかけたり、患者に労を強いる作業をすっ飛ばしたがる。枝分かれのノードで、「右か左か」決めるのに必要な検査以外はやらないほうがよい、派だ(そのことは新著「テーブル回診」にも述べられている)。

この記事の監修・執筆医師

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