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傷あとのない治癒をめざして 創傷治癒研究の最前線

   前回のコラムで"傷あとは消せない"と申し上げました。その理由は、人間のような高等動物では、傷の修復には「瘢痕組織(はんこんそしき)」が形成されて、その後、修復した部分を維持するために「瘢痕組織」は永久に残るからです。

   ところが下等動物では、傷を修復するのは「瘢痕組織」ではなく、障害を受けた組織そのものが「再生」します。組織そのものが再生するということは、傷あとが残らないだけでなく、イモリのように失われた四肢そのものが完全に再生する能力を持っています。

なぜ、イモリに可能なことが、人間にはできないのか?
なぜ、イモリに可能なことが、人間にはできないのか?

   なぜ、イモリに可能なことが、人間にはできないのか? 正直に言ってわかっていません。

   わかっているのは、「再生」と「修復」それぞれのメカニズムだけです。たとえ、高等動物の四肢の再生が可能になっても、おそらく数か月はかかるでしょう。

   その間に、外敵の襲撃を受けて命を失う可能性が多い。それならば欠損したままで、とりあえず傷を早く瘢痕組織で閉じてしまうほうが個体を維持するためには得策だという考えもあります。

   ところで、「個体発生」は「系統発生」を繰り返すという言葉があります。

   つまり、人間の胎児も発生の過程で、アメーバのような単細胞から無脊椎動物、そして両生類の時期を経ているという考え方です。

   ならば、両生類の時期に傷をつけても、組織が再生することで修復され、瘢痕は生じないのではというアイデアが生まれます。これは、実際にネズミの実験では証明されていることです。

   この分野は「胎児外科」といいますが、人間の場合、脳外科的な緊急性のある場合には行われることもありますが、傷あとを避けるために行うには、母子ともにあまりにもリスクが大きいため、行われていません。

   そこで、胎児の創傷に対する再生のメカニズムを成人に持ち込むことで、「スカーレスヒーリング(傷あとのない治癒)」が可能になるのではと研究が進められています。

   そもそもこの研究は、イギリスのファーガソン教授が先鞭を付けましたが、日本では今、ファーガソン教授の弟子にあたる慶應義塾大学病院・形成外科の貴志和生教授がその研究に取り組んでおられます。

   傷あとが跡形なく消えてしまう、素晴らしいことですね。貴志教授の研究が成功して、早い時期に「スカーレスヒーリング」が可能になるよう祈っています。[執筆/塩谷信幸 北里大学名誉教授、アンチエイジング医師団代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

この記事の監修・執筆医師

塩谷 信幸
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)

北里大学名誉教授
アンチエイジング医師団代表
NPO法人 アンチエイジングネットワーク理事長
NPO法人 創傷治癒センター理事長
医療法人社団 AACクリニック銀座 名誉院長

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