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乳がん治療と乳房再建の歴史 今後は免疫力に注目

   この50年間に「がんの外科的治療」の考えは根本的に変わりました。

50年間で「がんの外科的治療」の考えは根本的に変わりました
50年間で「がんの外科的治療」の考えは根本的に変わりました

   その最もよい例が「乳がん」の手術です。50年前、僕がレジデント(研修医)を終えた頃、乳がんの手術は、疑わしいところは取り除くという「ホールステッド法」のみで、それ以外の方法はまったく許されませんでした。ちなみに、日本では「ハルステッド」と呼んでいますが、正しくは「ホールステッド」です。

   その頃は、がんの根治のためには、手術は以下の条件を満たさねばならないとされていました。それは、原発巣(初めに発生したがんの病巣)とその所属リンパ節(がんがリンパに乗ってまず転移する先)とその間の組織すべてを切り取ることです。

   つまり、乳がんの場合は、乳腺と脇の下のリンパ節、そして、その間の筋肉を含んだすべての組織をゴソッと取ることを意味します。当然のことながら、あとには醜い変形が残るだけでなく、上肢はリンパの還流が悪くなり、いわゆるリンパ浮腫に悩まされます。そして肩関節はつれて手が上がらなくなったりします。

   それが、30~40年ほど前から、乳房だけを切り取ってあとは放射線治療で再発を防ぐことも認められ、さらにはがんの大きさやタイプに応じて、切り取る範囲が縮小されるようになりました。

   それと併行して進歩を遂げたのが形成外科による乳房の再建手術です。今までの単純な皮膚移植に加え、皮下脂肪、筋肉の移植も可能になり、残された乳房とほぼ同様な乳房をつくることが可能になりました。

   患者にとってこの上ない福音であるはずのこの手術に、最も抵抗したのが外科医でした。再建を希望する患者が「せっかく、がんを治してやったのになんて贅沢な。かえって再発するぞ」と、脅されることも多々ありました。

   それにもかかわらず、形成外科医は技術の向上に励み、再建手術は保険でも認められるようになりました。そして、いまでは多くの病院で、外科と形成外科がチームを組んで、乳腺外来を設けるようになっています。

   つまりはこういうことなのです。

   乳がんに限らず、昔流のがんの外科手術の考えでは、根治を目指すほどに、安全のために切り取る範囲が広がり、患者の負担や後遺症が多くなります。そこで、最近の傾向は、放射線療法や化学療法を併用して、なるべく外科的侵襲は少なくするようになったのです。

   その一つが、「内視鏡」や「腹腔鏡」の手術といえるでしょう。

   僕の個人的な考えですが、がん治療は、いずれは「免疫療法」が主流になってよいのではと思っています。それは、放射線療法でも化学療法でも、正常な細胞に与える傷害をなくすことはできない、免疫療法ならがん細胞だけに特異的に働かせることが可能といえるからです。免疫療法とはリンパ球の培養だけでなく、免疫力をアップさせるものなら幅広く検討されてよいでしょう。

   例えば「笑いの効用」も免疫力増強に役に立つのであれば、積極的に取り入れてよいのではないでしょうか。[執筆/塩谷信幸 北里大学名誉教授、アンチエイジング医師団代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

この記事の監修・執筆医師

塩谷 信幸
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)

北里大学名誉教授
アンチエイジング医師団代表
NPO法人 アンチエイジングネットワーク理事長
NPO法人 創傷治癒センター理事長
医療法人社団 AACクリニック銀座 名誉院長

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