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がん治療の奇策・兵糧攻め「動脈塞栓術」とは 世界が注目する日本の血管内治療

高い技術力と機材が揃って実現する

   現在、肝細胞がんについては国内でも比較的多く行われ、症例数が増えてきている動脈塞栓術。しかし実は、その他の部位のがんに関してはまだ適用が広がっていないのが現状だ。堀医師は脳腫瘍、白血病、リンパ腫以外のあらゆるがんにこの治療法を施し、その症例数は合計1万件と、世界一の症例数を誇る。

   治療効果も高く、患者の負担も少ないのに、なぜ普及しないのだろうか。その原因は大きく分けて二つある。一つは技術を習得する場の少なさだ。がん細胞へ栄養を送り込んでいる血管を特定するためには、放射線機器を使って画像を診断する技術、カテーテルを血管内に安全かつ正確に送り込む技術が共に絶対に必要なのだ。そしてもう一つの原因は、この治療法に必要な機材や材料の問題。画像診断に使う血管造影CT検査機器の価格は億単位。さらに、正常な細胞を傷つけることなくがん細胞だけを干上がらせるには、塞栓物質やカテーテルの開発・改良も欠かせない。堀医師はメーカーと共同で開発・改良も手掛けてきた。

「毒性や合併症を起こさないことはもちろん、より手術時間を短くするためには、確実に早くがん細胞の近くの血管まで行って血管を塞がなければいけない。そのための道具と材料はアイディア勝負です。実は特許は全部メーカーさんに譲渡するんですよ。そうでないと誰もが使えるようにならないですから。研修も積極的に受け入れています。症例数がある施設でその技術をオープンにしていかないと普及しないので、日本全国のみならず、世界中の医師たちの研修を受け入れています」

   血管の選択を誤れば正常な細胞を壊死させてしまう。多くの症例を手掛けたからこそ知るその怖さと確実な治療の重要性については、しつこいほど繰り返し伝え、実地の研修にこだわる。その頑固さと、共存する発想の柔軟さはどこから来るのか。

「中学生の頃に物づくりの授業で先生から『君は設計図どおりに作らないなあ』と言われたことがあります。こうした方がより便利だとか、ずっと使いやすいとか思うと試さずにいられなかった。そんなところから来るのかもしれません。余命宣告をされ、治療法がないと言われて行き場を失った患者さんにとって必要なのは、穏やかに日常生活を楽しんで生きられることです。根治を目指し闘い続けてきた患者さんは一様に疲れ切って診察室に来ます。目の前の患者さんが何に困っていて何が必要かこの治療法で何ができるのか、日々自問自答しています」

   世界から注目を集める日本発の治療法。QOL(クオリティオブライフ/生活の質)に重点を置く流れが顕著ながん治療を後押しする一つの可能性となるかもしれない。

<堀信一医師プロフィール>
1975年徳島大学医学部卒業。大阪大学医学部、大阪府成人病センター、スイス・ベルン大学医学部、八尾市立病院、市立泉佐野病院の放射線科を経て、2002年ゲートタワーIGTクリニック院長。2015年10月4日(日)18:30~ TBSテレビ「夢の扉+」に出演。http://www.tbs.co.jp/yumetobi-plus/

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