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「外科医の資質」を考える(上)

「外科医の腕」の評価は簡単ではありません
「外科医の腕」の評価は簡単ではありません

   最近は「神の手」という言葉が大流行りです。これは「手術の名手」という意味で使われているようですが、「外科医の腕」の評価は必ずしも簡単ではありません。

   それは、
① 何を対象としているか
② 外科医の評価基準は何か
③ 手術による患者の身体的負担と効果とのバランス
など、一律に扱えない要素が多々あるからです。しかも20世紀は外科手術の内容が革命的に変貌した時代です。そこで外科手術の進歩を追ってみましょう。

   多少乱暴ですが、外科手術の変遷を次の三期に分けてみましょう。
第一期:「蛮行」の時代
第二期:「視野確保」の時代
第三期:「遠隔操作」の時代

   第一期は古代から19世紀の麻酔法の出現まで。これは手術器具などの滅菌、消毒といった無菌法の開発とも並行していますが、無麻酔では可能な手術が限られており、その手術は阿鼻叫喚の世界でした。泣きわめく患者を押さえつけ、手術という「蛮行」は寸秒を争って行われていたのです。

   「鬼手仏心」とはその頃の外科医のイメージに近いと思います。当然のことながら、当時の手術の最大の評価基準はスピードでした。

   そこへ麻酔が登場し、第二期へと移ります。麻酔によって患者は痛みから解放され、外科医は時計を気にすることなく、ゆっくりと納得がいくまで操作できるようになりました。そこで最も重視されたのは、視野の確保です。

   つまり、術者が自分の操作を目視できるよう、切開部を大きくし、手術野を広げられるようになりました。ここで重視されるのは「メスさばき」であり、外科医が指で手術部位の組織を確かめながら、愛護的に切り開いていく技術です。

   また、昔、日本では、盲腸の手術などでいかに切開部が小さいかを競っていたことがありますが、これは当時の世界の外科基準では邪道とされていました。そして20世紀の中頃、日本人の手で内視鏡や腹腔鏡が開発され、手間は二倍、三倍かかりますが、開腹や開胸といった大手術よりもはるかに侵襲の少ない、広い意味での「内視鏡手術」が発達。時代は、「ロボット手術」へと進みつつあります。

   これが現在の第三期といえるでしょう。そこでは術者が切り分けていく患者の組織の触感は奪われ、ビデオ画面を睨みながらの遠隔操作となります。

   いうまでもなく現在でもまだ、第二期のいわば「古典的手術(この表現が最適かどうかは疑問ですが)」が主流であることは間違いありません。そしてまた、遠隔操作を行うためには、「古典的手術」の経験が大前提となることも確かです。

   というわけで、次回は「古典的手術」における外科医の腕の評価について考えます。[執筆/塩谷信幸 北里大学名誉教授、アンチエイジング医師団代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

この記事の監修・執筆医師

塩谷 信幸
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)

北里大学名誉教授
アンチエイジング医師団代表
NPO法人 アンチエイジングネットワーク理事長
NPO法人 創傷治癒センター理事長
医療法人社団 AACクリニック銀座 名誉院長

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