ノーマン・カズンズの「笑いと治癒力」は何度か取り上げた覚えがあるが、風邪で寝込んだのを機会にまた読み返している。
彼はアメリカの週刊評論誌「サタデー・レビュー」の編集長を永年務め、日本では25名のいわゆる「原爆乙女」にニュー・ヨークのマウントサイナイ病院で治療を受けさせ、日本の形成外科の誕生に寄与した人として知られている。
その彼が1964年に重篤な「膠原病」を発症し、当時はこれと言った治療法もなく、助かる確率は500人に1人と言われた。
だが彼はそれで落ち込まず、独自に膠原病と可能な治療法を探求し、
①ビタミンCの大量点滴療法
②笑いの効用
に辿り着き、見事に「膠原病」から脱出した。
ビタミンCの点滴療法は最近ではその抗酸化力、免疫機能強化力が認められ、アンチエイジングの分野でも、有効な手法として普及し始めている。
昨日も触れたように、現代社会では「ストレス」が殆ど全ての病気に関与している。
過度のストレスは「視床下部―脳下垂体―副腎系(HPA)」で受け止められ、「副腎疲労」を惹起し、様々な病気を引き起こす。
「膠原病」もその一つ。
「副腎疲労」を起こすストレスの一つとして、ストレス説の提唱者セリエは「情緒的緊張」を挙げている。例えば欲求不満や押さえつけた怒りなどである。
このネガティブな「情緒的緊張」に対して「積極的、肯定的な情緒は?」と考えたのがノーマン・カズンズの偉い所である。そして彼は笑いに着目し、寝室にテレビを持ち込んで毎日お笑い番組を見続け、見事に病を克服する。
彼は、その他にも「積極的な情緒」を引き起こすものとして「愛」「希望」「信仰」「信頼」そして「生への意欲」などを挙げているが、これらは全て医療の根幹にあるべきと、遅まきながら、我々医師共も気付き、真剣な取り組みが始まっている...と思いたい。
北里大学名誉教授
アンチエイジング医師団代表
NPO法人 アンチエイジングネットワーク理事長
NPO法人 創傷治癒センター理事長
医療法人社団 ウィメンズヘルスクリニック東京 名誉院長