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「外科医の資質」を考える(中)メスさばきについて

   外科医の腕というと、すぐ浮かぶイメージは「メスさばき」ではないでしょうか。

   丁度、時代劇の剣豪が、群がる敵共を相手にバッサバッサと切りさばく。手術はショーではないが、やはり見た目にキレイなメスさばきは結果もキレイといえます。

慌てず、一つひとつの動作を確実に
慌てず、一つひとつの動作を確実に

   ちょうど、バイオリニストが弓を弦の上に滑らすように、力で斬るのでなく、メスの腹の下で皮膚がさっと分かれていく・皮下組織の切り分けも、小さな血管を糸でしばる止血操作も着実に、決して手早くは見えないとしても、終わってみると意外と手術時間は短い。ちょうど茶の湯の名人のお手前を見るような鮮やかさ。

   最近はテレビ番組で手術の場面が映ることも多くなったので、注意深くご覧下さい。慌てず、一つひとつの動作を確実にしたほうが、慌てて二度、三度と繰り返すよりも時間を無駄にしないことはおわかりでしょう。

   また、あっちゃこっちゃいじり回すのもよくありません。今している操作が、そこだけではもう進めなくなった時に初めて別の操作に移る。これも大切な心得といえます。

   麻酔が発達した今、手術時間を競うことは意味がないし、邪道ともいえます。全身麻酔のリスクは、導入と覚醒にあり、一旦麻酔がかかった状態なら、1時間だろうが3時間だろうがリスクはあまり変わりません。

   もちろん、結果が同じならば早いに越したことはありませんが。

   さてここで、一般の外科医と形成外科医との価値観の違いに触れましょう。

   外科は病気の部分をキレイに切り取るのが目的です。命を救うためには機能も犠牲にする。機能温存のためには形を損なうこともやむを得ません。

   その目標をしかと定め、そこへ最短距離で到達するのが外科の価値観です。「鬼手仏心」といわれる所以です。

   ところが、怪我や病気で損なわれた形(一括して醜形【しゅうけい】と呼びますが)を再建する形成外科医にとっては、形すなわち仕上がりがすべてです。もちろん、そのために機能を犠牲にしたり、命が失われたりすることは許されませんが。

   ということは、いったん縫い終わっても仕上がりが気に入らなければ、縫合糸をバサバサっと切り離して、またやり直す勇気が必要とされます。

   幸い最近では、外科医も形成外科医もお互いの立場の差を認め合ったうえで、手術によっては共同作業をするようになってきました。その一つが乳がんです。

   外科医はがんの根治の立場から切除に専念し、引き続き形成外科医が乳房再建を行い、乳がんチームとして一丸となって患者のQOLに寄与するようになったのは喜ばしいことです。[執筆/塩谷信幸 北里大学名誉教授、アンチエイジング医師団代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

この記事の監修・執筆医師

塩谷 信幸
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)

北里大学名誉教授
アンチエイジング医師団代表
NPO法人 アンチエイジングネットワーク理事長
NPO法人 創傷治癒センター理事長
医療法人社団 AACクリニック銀座 名誉院長

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