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寮雨という洗礼

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   聞くところによると、最近は男の子でも、小便とするときに座ってするのが作法だという。つまり、周りに飛び散らして汚さないように。

   冗談じゃない、床が汚れたら拭きゃーいいじゃないか、というと、「では、あなた、そのたびにお拭きになります?」と今度は配偶者にやり込められた。

   ま、清潔はいいとしても、小用まで女子の真似をするなんて、かつての日本男児の質実剛健の気風はどこへ行ったのだ。実に嘆かわしい。

   昔の旧制高校は全寮制で、まずそこで先輩からみっちりと質実剛健さを叩き込まれた。そして"ああ玉杯に花うけて..."と自治の精神を謳歌したものである。自治ということは、己たちで律するということで、外部の者は一切中に入れないことになる、ということは掃除のおばさんも中には入れない。

   もちろん自分たちで掃除するわけはないので、大正時代に建てられた駒場の寮は、半世紀にわたって一度も掃除がされることはなかったのである。

   むさいとかバッチイとかの次元をはるかに超えていた汚さだったことは言うまでもない。

   それだけではない。寮雨という美風があった。寮は三階建てで、10名ほどの大部屋が続いていた。僕は一階の部屋をあてがわれた。

   入寮して最初の日、外は晴れているのに上から水がシャーシャーと窓辺に降り注ぐ。やがて同室の先輩が、窓枠に立ってズボンのチャックをはずし始めて、上からの水の正体がわかった。

   なるほど、窓の桟が緑のコケで覆われているはずだ。僕自身、この美風を身に着けるのに数日とかからなかった。一度この大自然の中での開放感を味わうと、暗い閉鎖された空間の中での営みはあほらしくなってくるものである。

   あるとき占領軍の視察があった。皆三階に駆け上がり、いっせいにジープの幌をめがけて寮雨の洗礼を施してやった。旧制高校こそ、帝国日本の悪の温床であるとして、戦後の学制改革で占領軍によって廃止されたのは、この事件も大きな要因だとする説もある。

   このように質実剛健の行き過ぎも困るが、僕は小さな用を足すのに婦女子の真似をすることだけは、断固お断りしたい。そして婦女子に命じられて、便所の床を拭く気もさらさらないと申し上げる。

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この記事の監修・執筆医師

塩谷 信幸
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)

北里大学名誉教授
アンチエイジング医師団代表
NPO法人 アンチエイジングネットワーク理事長
NPO法人 創傷治癒センター理事長
医療法人社団 AACクリニック銀座 名誉院長

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