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【第1回】感性は脳でどのように作られるのか? 慶大文学部心理学 川畑秀明准教授

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川畑先生の研究室「慶應義塾大学感性ラボ」にて。川畑秀明(左)、AgingStyle編集長 塩谷信幸(右)

   塩谷   :本日は、慶應義塾大学文学部心理学准教授である、川畑先生の研究室に伺いました。心理学は目に見えない心の謎を解き明かす学問というイメージですが、まずは、どのような研究をされているのか、教えていただけますか。

   川畑   :心理学にはいろいろな分野があります。私は、特に実験的な方法を利用して、人間が様々な情報をどのように処理するのかについて研究しています。私たちが何をどう感じて、どのように行動するのか。そこには「脳」と「心」の働きが関係しています。私が特に注力してきたのは、「感性科学」と呼ばれる分野で、見る、聞くといった感覚を通して生まれる「感性」が脳や心でどう作られるのかを研究しています。

美を感じる脳と心の仕組みを研究

   塩谷   :最近はどのようなテーマで研究されているのですか。

   川畑   :美や魅力を感じる脳と心の仕組みや、不安やストレスに対して私たちが感じる美や魅力に及ぼす影響などを中心に研究しています。子どもの芸術表現やプロダクトデザインに関する研究も今後は検討したいと思っています。ほかには、人の印象や魅力が政治的・経済的意思決定に及ぼす影響についても研究を始めています。

   塩谷   :ところで、研究室の中には小部屋がいくつかありますね。この中で実験をするんですか?

   川畑   :小部屋は4つあるのですが、全て暗室になっていて、そこに実験装置やモニターが置いてあります。実験には昔ながらのブラウン管も使うんですよ。電気信号に反応する速度や色の再現性が液晶とは違うので、実験の内容によって使い分けています。

目の特性と脳の認識を体験

ゴーグルをして認識実験を体験
ゴーグルをして認識実験を体験

   塩谷   :具体的には、どのような実験をするんですか。

   川畑   :ここでは、私たちがモノや顔をどういう風に見ているのかを調べます。例えば、これは最近バーチャルリアリティーでも使われているゴーグルで、左右の目に別々の映像を見せることができるものです。人間の目は、右目と左目でまったく別のモノを見ると、二つが重なって見えるわけではなく、どちらか一方しか見えないという特性があります。その性質を利用して、どういった顔が認識されやすいか、逆に、認識されにくいのかといったことを調べています。

   塩谷   :一方は、意識にのぼらないだけで、脳には伝わっているんですか。

   川畑   :脳には伝わっていますが、必ずしも意識はされません。現在、研究中ですが、人の顔に限って言えば、右目と左目、どちらで見た顔が認識されるかというのは、見ている本人と見えている人との関係性も大きく関わっているのではと考えています。

   塩谷   :面白いですね。実は最近、その時の気分によって、人の考え方や捉え方が変化するんだなと感じたことがありまして。心理学では「気分」に対してはどのように考えられているのですか。

   川畑   :心理学では、うれしい気分のときは自然と楽しい情報を選択したり注意が向きやすかったりし、逆に悲しい気分のときは悪い情報やつまらない情報を選択したり注意が向きやすいという理論があり、「気分一致効果」といいます。
 これは、行動にも表れるもので、うれしいときは体を動かすテンポが速くなり、悲しいときは遅くなるんです。
 実際に海外で行われた社会心理学の実験では、コンピュータの画面に出た文字が意味のある単語かどうかを判別してもらうというテストをして、そのとき「年老いた」など老人を連想させる単語を混ぜて見せるグループと、「若々しい」など若者を連想させる単語を混ぜて見せるグループを比較した研究があるのですが、老人を連想させる単語が混ざっていたグループでは、実験が終わった後、エレベーターに行くまでに腰が曲がって、歩くスピードも遅くなったそうです。

好きなものはよく見える

   塩谷   :先生は、「美」や「魅力」に関しても研究されているとおっしゃっていましたが、そこにも無意識に自分と関わりの深い方を選択していたり、気分に左右されたりすることはあるのでしょうか?

   川畑   :自分の好きなものはよく見える、ということはあります。また、ひとついいところが見つかると、別のところまでよく見えたりする「ハロー効果」と呼ばれるものもあります。ハロー(halo)とは英語で「後光が差す」という意味です。

   塩谷   :見た目の美しさや魅力に関する研究は、QOL(人生の質)を高めるためにも役立つことがたくさんありそうですね。

   川畑   :そうですね。美や魅力をはじめとする「感性」は、時代や文化なども影響しますから、複雑ではありますが、そのぶん興味は尽きません。

   塩谷   :今後も先生のご活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。

◆◆◆

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慶應義塾大学文学部心理学准教授 川畑秀明氏
アンチエイジング医師団の顧問団メンバー。鹿児島大学教育学部卒業。九州大学にて博士課程(人間環境学)修了後、日本学術振興会特別研究員、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(UCL)認知神経学研究所神経生物学研究室研究員、鹿児島大学教育学部准教授を経て、現職。専門は感性心理学、認知神経科学。主観性と経験価値の心理とその脳メカニズムを研究し、主に、芸術、美、魅力、ユーザー・エクスペリエンス、デザイン、ユーザビリティ、感性教育、鑑賞行動の解明に努める。

医師・専門家が監修「Aging Style」

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