暴力的なゲームで遊んでいた子どもが、遊んでいなかった子どもに比べ、思春期に攻撃的、反社会的になる可能性はごくわずか――英バース・スパ大学とブリストル大学、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの共同研究チームによる研究結果だ。
研究は、英国の大規模な追跡調査「エイヴォン両親・子ども縦断調査研(ALSPAC)」から、アンケート調査に回答した1800人の子どもを対象としている。
調査では、8~9歳と15歳の時点で遊んでいるゲームのジャンルを、「シューティング」「RPG」「パズル」「フライトシミュレーター」「教育用」などに分類。「撃ち合い」が発生する「シューティング」を最も暴力性が高いゲームとし、プレイ時間や所有しているソフト、ゲーム機の数などを加味して、暴力的なゲームで遊んでいたかどうかを判定している。
またアンケートと合わせ、継続的に反社会的、攻撃的、反抗的な行動を起こす「行為障害」や「うつ傾向」のリスクがないか、メンタルチェックを実施。家庭環境や社会階級(経済状態)、家族や本人の精神疾患の既往歴、IQなどで調整している。
その結果、8~9歳のころに暴力的なゲームで遊んでいた子どもが、15歳のころに行為障害となる可能性はわずかに上昇していたものの、遊んでいなかった子どもの上昇率との差が小さく、影響は非常に弱いとみられる。
うつ傾向のリスクに関しては、どちらの子どもも、まったくみられなかった。研究者らがゲームのジャンルごとに詳しく分析したところ、今回の調査では行為障害に影響しているのは、ゲームの暴力性よりも「競争(ほかのプレイヤーと点数などを競う)」の可能性が高かったという。
発表は2016年1月28日、米オンライン科学雑誌「PLOS ONE」に掲載された。
医師・専門家が監修「Aging Style」
参考文献
Prospective Investigation of Video Game Use in Children and Subsequent Conduct Disorder and Depression Using Data from the Avon Longitudinal Study of Parents and Children.
DOI: 10.1371/journal.pone.0147732. PMID: 26820149