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人はなぜ髪の毛にこだわるのか?

   僕が、名誉院長を務めているAACクリニック銀座はアンチエイジングに特化したクリニックだが、患者さんの9割は薄毛の悩みである。

髪の毛の問題は多くの人が悩むところだ
髪の毛の問題は多くの人が悩むところだ

   しかし、なぜ我々はこれほど「毛」にこだわるのだろう。デズモンド・モリスというイギリスの動物学者は、人間は"裸の猿"だといっている。進化の頂点で人類が誕生したとき、猿は体毛を失って人間となり、同時に、どういうわけか、髪の毛だけは伸び続けるようになったという。

   デズモンド・モリスも言うように、直立した裸の猿が、頭髪だけを黒ぐろとなびかせて、森の中を飛び回るのは、動物界では異様な風景だったに違いない。やがて人間が言葉を持つようになり、文明を誕生させたとき、人間自身も、この髪の毛に神性を感じたのではなかろうか。

   それは各民族の伝承にも残され、やがてはそれぞれの文化の中で、宗教、権力、そしてファッションの担い手として、象徴的な役を果たすようになる。

   文明が発達し始めて以来、少なくも男性の場合には、男性的である、また、力の象徴としてまた神聖なるものの属性として髪の毛が尊重されてきた。たとえば、バビロンのギルガメッシュ神話。ギルガメッシュの力のもとは、やはり毛であった。病気になって毛が抜けたら力がなくなり、負けてしまう。しかし、また毛が生えてきて、力を取り戻したということになっている。

   また、「旧約聖書」のサムソンとデリラの話でも、サムソンの力のもとは毛であった。やはり毛を切られると、負けてしまうが、再び毛が生えてきたら勝ったと記されている。ローマの皇帝シーザーは、実は薄毛で、月桂冠をかぶっていたのは、薄毛を隠すためだったことは有名な話である。

   一方、女性の場合は、かつて西洋では、女の人が髪をバサッとおろすことは、性的な解放といったものにつながるので好ましくない、髪はいつも束ねて、帽子を被り隠すことが、たしなみとされてきた。その意味で、たとえば絵画の世界では、ロゼッティの「黒髪の女」など、黒髪をわざとなびかせて、社会通念に挑戦しているのだ、という説明を聞いた覚えがある。

   しかし、日本の場合はまた違って、清少納言の『枕草子』に、「ぬばたまの長き黒髪も手入れしなくては美しくない。洗い立ての烏の濡れ羽色の髪が美しい。髪ばかりでなく女性が最も美しく見えるときである......」と書かれているように、日本では平安時代の昔から、黒髪をなびかせてと、女性は描かれている。

   つまり毛は、男にとっても女にとっても、まず、性のアイデンティティーを保つものであるといえる。

   また、髪は顔のフレームとしての役割もある。それがなくなるということは、自分のアイデンティティーの喪失につながるということで、髪にこだわるという見方もある。これら諸々の習俗、思惑が髪に対するこだわりの源といえるのではないだろうか。

   近年、薄毛治療は研究が進んでいる。次回は最新の薄毛治療についてご紹介したいと思っています。[執筆/塩谷信幸 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

この記事の監修・執筆医師

塩谷 信幸
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)

北里大学名誉教授
アンチエイジング医師団代表
NPO法人 アンチエイジングネットワーク理事長
NPO法人 創傷治癒センター理事長
医療法人社団 AACクリニック銀座 名誉院長

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