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震災と感染予防。キャッチアップ・スケジュールの制度化を望む

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   熊本地震からの復興が進んでいる。学校も再開し、避難所も再構成されつつあるようだ。しかしながら、現在も多くの方は避難所に避難しており、また車内で夜を過ごしている。当初から懸念されていた感染症と血栓症のリスクはいまだに存在する。

   インフルエンザやノロの場合、感染経路の遮断は比較的容易である。感染経路を遮断すれば感染は広がらない。もっとも、過密な環境下であれば両者を防ぐのは極めて困難であり、避難所の人ー人間のスペース確保が大事である点はすでに述べた。

   さて、人-人間のスペースを確保しても感染の広がりを防げない感染症もある。その一つが水痘(みずぼうそう)だ。

   水痘患者が発生した場合、患者は速やかに隔離されねばならない。しかし関連率はとても高く、皮疹が発生する前に他者への感染性は生じている。(一部の例外を除き)、水痘は一回罹患してしまえばなんどもかかる病気ではない。だからすでに水痘罹患率がある方は心配ない。水痘ワクチンも有効なので、ワクチン接種歴があっても(1回でも2回でも)たいていは大丈夫だ。

   しかし、日本では水痘ワクチンが定期接種化されたのはつい最近(2014年10月)のことである。多くの人には免疫がない。小児に多い病気だが、成人でも免疫がなければ発症するし、その場合は肺炎などを合併し重症化することが多い。

   水痘患者が発生したとき、周辺の人達で、かつ免疫のない人(かつ免疫抑制のない人)には曝露後予防接種という方法で水痘罹患を防ぐ方法がある。受動免疫といって免疫グロブリン(VZIG)を投与する方法もあるが、これは日本にはない。アシクロビルなど抗ウイルス薬も、ワクチン禁忌の場合などに用いることもあるが、曝露後予防薬として有効であるというエビデンスを欠いている。

   災害救助法では、罹災した患者に医療を無償で提供できる。しかし、ここには曝露後予防という概念はない。また、日本の定期接種システムは非常に窮屈なシステムで、無料でワクチンを提供できる年齢に制限が多い。したがって、災害でリスクの高い避難所で水痘患者が発生したとき、確実に予防効果が期待できる水痘ワクチンを曝露後予防として提供するのは事実上極めて困難である。

   しかし、この問題を解決する方法がある。それは予防接種のキャッチアップを定期接種という制度に取り込むことである。これは国際的には「常識」である。日本小児科学会もこれを推奨しているが、国としては制度を採用していない。日本のワクチン事情は近年ずっと改善されてきているがこういうところはまだまだ「後進国」である。

   キャッチアップとは、定期接種で推奨される年齢で当該予防接種がなされなかったとき、それを補うために後からワクチンを接種するやり方をいう。日本でも長期療養などごく一部の事例でキャッチアップが定期接種で認められるが、その適用範囲は極めて小さい。これを

   水痘の免疫のない方全て

   に適用すれば、定期接種として堂々と曝露後予防ができる。というか、事前に避難所で(曝露前に)予防接種を提供し、リスクを事前にヘッジできる。保健師たちが一所懸命水痘患者のサーベイ、スクリーニングをする苦労だって激減する。

   キャッチアップの対象者はけっしてマジョリティではないのだから、財務省も厚労省もこれを認め、もっと緩やかなシステムにすればよいのだ。「新型」インフルのとき、厚労省はご丁寧にものすごく細かくて長い接種者対象リストを作って現場を困らせた。もっとザックリにしておけば、接種者全体が増えて、コミュニティー全体が得をするのに、どうして「細かいところでやたらと正しいんだけど、大きいところで間違える」方法を選んでしまうのだろう。年齢をうるさく計算しないと接種できず、待ちの間に肺炎になったら泣くに泣けない大人の肺炎球菌ワクチンも、よくもまあこんなに細かく作ったもんだと呆れるようなおかしなプランである

   数多くの震災の経験から、日本の震災対応はだんだん改善していると思う。そして、次の震災は日本のどこかに必ず、間違いなくやってくる。そのときに同じ苦労をしなくてよいよう、現時点での問題点は必ず把握し、そして事前に改善しておくべきだ。その方法の一つとしてのキャッチアップ採用の提案である。

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この記事の監修・執筆医師

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