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化学療法に用いた針は、ジップロックに入れるべきか

ああああ
岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)

   お恥ずかしいことで、化学療法での医療従事者の曝露対策について全く無知でした。今回、化学療法に用いた針をジプロックに入れ、その経緯で針刺し事故の相談を受けたので、調べてみた。

   「見てわかるがん薬物療法における曝露対策」(医学書院)によると、「調整に使用したHD(hazardous drugs)の入っていたバイアルやアンプル、注射器や注射針、PPEなど:ジッパー付きプラスチックバッグに入れ、蓋付きの感染性廃棄物容器に入れる」とある。ただし、根拠となる文献は引用されていない。調剤に使用するものがなぜ「感染性廃棄物」なのかも分からない。

   「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン2015年版」(日本がん看護学会・日本臨床腫瘍学会・日本臨床腫瘍薬学会)によると、「HDの調整・投与過程で発生したアンプルやバイアル、注射器や注射針、使用済みの輸液バッグや点滴チューブ、安全キャビネット内で使用した手袋など、高濃度のHDを含む化膿性のある廃棄物は、封じ込めのためにジッパー付きプラスチックバッグに入れてから、HD専用の廃棄容器に廃棄する」とある。

   そして引用文献としてAmerican Society of Health-System Pharmacists(ASHP)2006年のHDガイドラインを引用している。なお、本書によるとHDを感染性廃棄物と同等の扱いにする根拠は環境省の「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」によるそうだが、日本にはHD廃棄物に関する法規則が存在しないのだそうだ。このマニュアルでは尖ったもの(sharps)はすべて感染性廃棄物として扱うよう述べており、またそれに付随したチューブやバッグも(感染性の有無とは関係なく)同様に扱うからだ。

   以前からぼくは、感染性廃棄物の法制度は非科学的、かつ非論理的なので改正するよう主張しているが、環境省も関連学会もそういうことには関心がない。が、この話は本論からずれるのでこれ以上は述べない。

   さて、問題は引用されているASHPガイドラインだ。

   Once hazardous waste has been identified, it must be collected and stored according to specific EPA and Department of Transportation require- ments.112 Properly labeled, leakproof, and spill-proof con- tainers of nonreactive plastic are required for areas where hazardous waste is generated. Hazardous drug waste may be initially contained in thick, sealable plastic bags before being placed in approved satellite accumulation containers. Glass fragments should be contained in small, puncture- resistant containers to be placed into larger containers ap- proved for temporary storage.

   と、ASHPは廃棄物を容器に入れる前に「厚い、ジップロック可能な(sealable)プラスチックバッグに入れておいてもよい(may be)」と書いている。「せよ(must)」ではなく「してもよい(may)」なのだ。針についての具体的な記載はないが、ガラスの破片などは貫通性のない容器に入れよ(should)とある。また、血液体液のついたものは他のHD廃棄物と混ぜてはならない(must not be mixed with)とある。「ガイドライン」はASHPガイドラインを正確に引用していない。

   ちなみに、ISOPPでは

   All sharps waste must be placed in puncture resistant containers. All cytotoxic waste must be placed in secondary packaging and sealed to ensure that leakage cannot occur, and must be clearly labelled to indicate the presence of cytotoxic waste.

   とあり、針刺しや薬漏れが起きないよう、「puncture resistant containers」に入れよ、とある。プラスチックバッグがこの用を満たさないのは当然だ。

   使用済みの針をプラスチックバッグに入れるとワンアクション増え、それが遠因となって針刺しとなる。針刺しは感染的にもHD曝露的にも問題だ。現行の日本の推奨はよって適切ではない。針は別扱いにするか、針刺しが起きない別の容器に入れるよう、推奨を変えるべきだ。[楽園はこちら側 2016年5月20日掲載]

楽園はこちら側
http://georgebest1969.typepad.jp/blog/

この記事の監修・執筆医師

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