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誰でもできる研修医指導3

岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)
岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)

S「D先生、聞いてください。今ローテしている研修医、みんな外科志望であんまやる気感じないんですよね。まあ、こっちもあんま教える気にはならないんですけど」
D「なんでだい。一所懸命、教えたらいいじゃないか」

S「だって、彼らは別に内科医にはならないんですよ。ぼくが一所懸命教えたって彼らがそれを活用することはない。お互いにとって時間の無駄ですよ。ちゃっちゃと患者見てもらって、レポートとか書かせて、つつがなく次のローテに回ってもらったほうが楽じゃないですか。ぼくも、彼らも」

D「逆だよ。そういう奴らこそ、誠心誠意を込めて一所懸命教えなきゃいけないんだ」
S「そうですか~?また長谷川豊ですか?」
D「長谷川言うな!別に斜め上を狙ってるわけじゃない。考えてもみろ。外科の患者さんだって発熱もするし、心不全にもなるし、腎不全も起きるし、せん妄も起きる」
S「まあ、そうですけど」

D「時代遅れの縦割り医局制度のときは、そういうときの患者対応は"やっつけ仕事"だった。採血して見当違いな抗菌薬を出したり、とりあえずラシックス使っとけ、みたいになるだろ」
S「まあ、よく見ますね。そういうの」

D「これからの医者はポリバレントじゃなきゃいけない。自分の専門領域しか出来ない医者は、シュートしか打てないストライカーと同じ。時代遅れなダイナソーなんだよ。そんなのは医局と一緒に滅びるしかないんだ」
S「先生、またそういう危ないことを、、、、人に聞かれたら大変ですよ」

D「外科志望の研修医が外科医になったら、もう内科領域をじっくり勉強する暇はなくなる。外科領域も奥が深いからな。一所懸命全身全霊を込めて外科のことだけ考えてないと優秀な外科医にはなれないだろう」
S「そうですねえ」

D「だとしたら、今回っている外科志望の研修医にとって、朝から晩まで真剣に内科のことを考えるチャンスはこれが生涯最後かもしれん。呼吸の管理や、電解質異常の解釈なんかは、短期間でもきっちり教えておけば一生使える財産だ。現代医療のポリバレントな医者を育てる義務がおれたちにはある。スーパーローテってのはとてもよくできたシステムなんだよ」

S「そうですかあ?専門医になるのが数年遅れてしまう、ダメな制度だって批判も多いですよ」
D「そんなたあない。急がば回れでな。数年くらい回り道しても、内科医は外科の、外科医は内科の勉強をする時期は必要なんだ。たとえ数ヶ月でも小児科研修やったり、精神科研修をやっておくと後々、とっても役に立つ。初期研修制度が地域から医者を奪った、みたいな批判もあるけど、そもそも地域医療においては"いろいろできる"医者がいたほうが助かるだろ。自分の専門領域しかできない医者は地域では役に立たないか、質の低い医療しか提供できないからな。ここでも急がば回れで、そういうポリバレントな医者を育てたほうが地域医療には役に立つ」

S「なるほどねえ」
D「それにさ、数年の初期研修が「時間の無駄」とか批判するやつに限って、自分の息子や娘が医学部に行くのに二浪、三浪するのは構わなかったりするんだ。矛盾してるだろ?酷いのになると、せっかく医学部に入学できたのに、仮面浪人してもっとブランド効果の高い医学部に再入学したりするやつすらいる。そっちのほうがずっと時間の無駄だろうが」

S「D先生、自分がブランド大学出身じゃないからってそんなこと言わなくても」
D「そんなこと関係ないんだもん!お前はいいよな、名門大学のゆとりのお坊ちゃんで。俺の世代はベビーブーマーの受験地獄世代なんだよ!」
S「拗ねないでください」
D「でもな、他科を回っている研修医を一所懸命教える理由はそれだけじゃ、ないんだ」
S「え?」

第3回「他科希望の研修医こそ一所懸命に教えろ」その1 終わり

続く。

この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。

[楽園はこちら側 2016年11月16日より転載]

楽園はこちら側
http://georgebest1969.typepad.jp/blog/

この記事の監修・執筆医師

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