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誰でもできる研修医指導11

岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)
岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)

S「D先生、聞いてくださいよ。うちをまわってる初期研修医が"定時になりましたから"って家に帰っちゃったんですよ」
D「仕事が残ってるのか?」
S「いや、彼に与えられた仕事は全部こなしましたよ。でも、初期研修医が17時に帰宅しちゃうなんて非常識にも程があるじゃないですか!」

D「なんで?なにが非常識なの?」
S「だって、ぼくなんかずっと遅くまで残っているわけですし、、、」
D「S先生が遅くまで残っていると、研修医もそれに付き合わなきゃいけないわけ?」
S「まあ、そういうふうに決めてるわけじゃありませんが、ちょっと薄情なんじゃないんですか?」

D「君は、その研修医が既婚だか未婚だか知ってるかね?お子さんがいらっしゃるかどうか。介護を必要としている親が同居していないか。知ってるかい?」
S「いいえ。そんな個人情報は把握していません」
D「あの研修医は結婚していて、小さいお子さんが生まれたばかりだ。お父さんが難病で寝たきりなんだ。奥さんも体を壊しがちで、しばしば看病してあげなきゃいけない。そんな大変な境遇の彼が、仕事もないのに単にダラダラ仕事を遅らせてるS先生に付き合って夜まで病院にいたとしたら、そっちのほうが薄情だと思わないかい?」

S「別にダラダラ仕事を遅らせてるわけではありませんが。でも、彼ってそんなたいへんな境遇だったんですか?全然知らなかった」
D「嘘だよ」
S「え~~~」
D「嘘だけどさ、そういう研修医だっているかもしれないじゃないか。S先生が把握していないだけで」
S「え~~~、まあ、そうですけど~」

D「仮にそういう境遇にいなかったとしてもだよ、研修医が仕事を終わらせて帰宅するのは実に健全なことだと思うよ。リフレッシュして翌日の仕事に邁進するもよし、自宅で勉強するもよし。どっちにしても病院の業務にとってはプラスになるんじゃないかな。ダラダラ遅くまで残って残業代を掠め取っているS先生よりずっと立派だよ」
S「なんでそこにくる?」

D「S先生は上司よりも部下が早く帰宅するのがムカつくわけだろ。でも、そんなの時代遅れなアナクロな考え方だよ。仕事が終わったらさっさと帰宅する。これ、国際的には常識だよ。夜遅くまで仕事をするのが医者のデフォルトだと信じ込んでいるのは、日本社会の悪い癖だ。海外では医者であっても定刻になったらさっさと帰宅し、当直チームにあとを任せるんだよ。そうやって全員のQOLを確保する」

S「先生、そんなこというからアメリカかぶれって言われるんですよ」
D「馬鹿野郎。俺は日本で一番アメリカ医療に批判的な医者だよ。俺の書いた本をちゃんと読んでみろ。何も読んでない愚か者が、知りもしないで、留学経験のある俺を妬んでそういうデマを飛ばすんだ」
S「別に先生を妬む理由は全然ないと思いますけど。単に研修医教育で(ちょっと)評価が高いだけで、とくに業績も地位も名誉も財産もガールフレンドもいないじゃないですか」

D「な~に~を~、お前、そんな目で俺を見てたのか?しかも彼女は関係ないだろ」
S「まあ、でもおっしゃることはわかりました。確かに、仕事が終われば上司がいても帰宅する、は必ずしも間違った態度ではないような気がしました」

D「それだけじゃない。研修医ができるだけ早く帰宅するのは、彼自身のパフォーマンスを上げるのにとても重要なんだ。つまり、これは教育効果なんだよ」
S「なんですって?早く帰宅する研修医が優秀になれるわけないじゃないですか」
D「そこが、S先生の浅はかさだよ」
S「ぐさっと罵りますね」
D「君もね」

第11回「研修医のプライベートライフを大事にしよう」その1 終わり

続く。

この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。

[楽園はこちら側 2016年11月28日より転載]

楽園はこちら側
http://georgebest1969.typepad.jp/blog/

この記事の監修・執筆医師

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