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誰でもできる研修医指導15

岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)
岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)

S「D先生、聞いてください。今回ってる研修医なんですけど、持病があってしょっちゅう休んでるんですよ」
D「おやおや、どんな持病だい」
S「それは個人情報だから教えられません」

D「えらいっ。S先生成長したなあ。そうそう、たとえ同僚だろうと上司だろうと、医療者個人の健康問題を勝手に漏洩してはならない。医療従事者のHIV感染とかを勝手に漏洩して、あまつさえクビにするようなケシカラン病院もあるんだ」
S「ぼく、基本的にD先生、信用してませんから」

D「なにおう。Trust nobodyは臨床医の態度としては立派だが、俺の前でそれを言うか?」
S「まあまあ、D先生はなんでも言える理想の指導医ですよ」
D「さらっとごまかしやがったな。しかしS先生、そういう休みがちな研修医も大事にしてあげるんだぞ」
S「うーん、でも忙しい病院勤務において、そういう研修医は足を引っ張る存在なんじゃないですかねえ」
D「バカだなあ。早引けしたり、欠勤してるだけだろ。別に足を引っ張ってなんかいやしない」

S「そうポンポン人をバカバカ言わないでください。パワハラで訴えますよ」
D「やれるもんならやってみろ。返り討ちだ。セクハラ・パワハラ委員会とはしょっちゅう議論しててツーカーの仲だ」
S「そんだけ、ハラスメントを問題にされてるんじゃないですか。でも先生、休みがちな研修医はあきらかにチームの足を引っ張ってるとおもいますが」
D「じゃ、聞くけどその研修医が存在しなかったら、仕事がより多くできるのか?普通の研修医がする仕事を10としよう。その研修医がたとえ5の仕事しかしなかったとしても、それは立派なプラス5だ。別にマイナスになってるわけじゃない。"足を引っ張って"なんていないんだよ」

S「まあ、理詰めでそう言われるとそうかもしれませんが、他の研修医はムカついてますよ。あいつばっかり楽をしやがってって」
D「楽なんてしてるもんか。他の研修医たちが十全な研修を受けてどんどん成長しているのに、自分はその半分しか研修できていない。忸怩たる思いでいるかもしれないじゃないか。表面的な理解で休む研修医が"トクをしている"と思うのは間違いだ。だいたい、病気で仕事を休んで一番つらい思いをしているのは、症状のある当該研修医だ。健康に仕事している俺たちじゃない」

S「うう、またしても完璧に論破された」
D「あったりまえだ。そんなことも分からずよく"患者の気持ちがわかる医者"とか平気で口にするな。全然分かってないじゃないか」
S「うぐっ。またそういう人の心の傷に塩を塗り込むようなことを」
D「ひひひひひ。パワハラが怖くて指導医やってられるか」
S「えーん」

D「それにな、パフォーマンスが高くない研修医を歓迎すると、結局はチームパフォーマンスはあがるんだぜ」
S「えええ?どうしてですか?チームパフォーマンスは個々のスタッフの質が高くないとダメなんじゃないんですか?」

第15回「多様性を大切にしよう」その1 終わり

続く。

この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。

[楽園はこちら側 2016年12月2日より転載]

楽園はこちら側
http://georgebest1969.typepad.jp/blog/

この記事の監修・執筆医師

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