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誰でもできる研修医指導16

岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)
岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)

D「パフォーマンスが悪い研修医を歓迎しよう。そうすれば、他のパフォーマンスがイマイチの研修医も「ここなら俺たちの居場所がある」とやってくる可能性が高い。もし、パフォーマンスのよいスーパー研修医だけを歓迎し、できの悪い研修医お断り、にしたら、そのチームはどうなる?参入者がどんどん減っていき、先細りしていくだけだ」

S「ああ、分かります。そういう診療科ってありますね」
D「そういう診療科はなるほど優秀な人材がそろっていて、見た目はパフォーマンスがいいかもしれない。しかし、長い目で見るとそういう科はやせ細り、滅びゆく運命にある。参入者に対するハードルが高いからだ」
S「でも、ハードルが高いところで挑戦したいっていう優秀な研修医は集まると思いますよ」
D「その可能性もあるが、頭がよくて性格が良くて、体力抜群の研修医なんてそうたくさんはいない。いずれ立ち去り型に、衰退していく。その科の一番の下っ端は何歳になっても下っ端の仕事をしないといけない。下に新しい人が入ってこないからだ。その恨みがチームパフォーマンスを下げる。悪循環だ」
S「うーん、リアリティある一例ですねえ」
D「そんなになんでもかんでもできるスーパー研修医じゃなくてもいいんだ。勉強ができなくても性格がよい。体力がなくても、患者の気持ちはわかる。何かの欠点は他の長所で補えばよいし、「体力がない、だから患者の気持ちがわかる」みたいなのは欠点がある意味長所になっている。病気したことがない体力バカの研修医よりも、ずっと患者に寄り添えそうだろ?」
S「確かに」
D「多様性のない等質な集団だと、そういう観点が抜け落ちてしまう。多様性を許容して、いろんなタイプの人材を確保しておいたほうがよい。子育てしている研修医、介護中の研修医、持病がある研修医。大歓迎だ。それがチームに新しい価値をもたらすんだ。等質な集団は、普段は価値観を共有しやすいからチーム作りは楽だけど、トラブルが起きたり、間違えた時に総ゴケする可能性が高い。普段役に立たない人も、いざというトラブル時にはとても役に立ったりするものだ。異質な集団、梁山泊のような組織のほうが絶対に強いチームだ」
S「なるほど」
D「個々人が10のパフォーマンスが出せるだけのチームは弱い。個人の力が1や2の人たちも歓迎すると、全体では(ネット)総合点はより高くなるんだ。「当直できない?ふざけんな!」と追い出すような組織よりも「週1回でも外来やっていただけるんなら大歓迎です」のチームのほうが、チーム全体の戦力は高まる。簡単な、算数の問題だ」
S「そうですねえ」
D「そのために大切なのが、価値の多様性への寛容と、嫉妬心の克服だ。ヒトと自分が違うことはよいことなんだよ。自分が当直しなきゃいけないのに、あの人は当直していない、みたいなつまらない理由で他者を排除しようとするから、チーム全体のパフォーマンスは落ちるんだ」
S「確かに」
D「ぼくの元部下で聴力が落ちたドクターがいたけど、拡声器付の電話の受話器をポケットに入れ、特殊改造した聴診器を使って診療していた。優秀だったよ。ハンディキャップのある人を歓迎するのはチームパフォーマンスの観点からも医療倫理の観点からも正しい。外国人医療者の輸入がトピックになってるけど、彼らも「日本語能力に若干劣るハンディキャップの持ち主」と考えればいいんだ。彼らに完璧な日本語力を求めるなんて、酷すぎるよ」
S「また、看護協会とかに怒られますよ」

第16回「多様性を大切にしよう」その2 終わり

続く。

この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。

この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。

[楽園はこちら側 2016年12月5日より転載]

楽園はこちら側
http://georgebest1969.typepad.jp/blog/

この記事の監修・執筆医師

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