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誰でもできる研修医指導22

岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)
岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)

S「そりゃ、完璧とはいえないかもしれませんが、ぼくは言動は一貫させていると思ってます」
D「言動なんてコロコロ変わったっていいんだよ」
S「はあ?さっきと言ってること違うし」
D「あのね、"研修医にとって"最悪の指導医とは一貫性がないことだ。しかし、それは単に研修医目線の願望にすぎない。本当に客観的に真に"最悪の指導医"かどうかはわからない」

S「でも、研修医に教育してるんですから、研修医たちから評価されてなんぼでしょ」
D「あいつらは未熟な若輩者だぞ。ものの良し悪しなんてわかるわけないじゃないか。客が気に入った陶芸がいい陶芸か?違う。プロが真贋を確かめたものこそが"よいもの"なんだ。研修医に指導医の良し悪しなんて分かってたまるか」
S「またそういう炎上招くような暴言を。でも、コロコロ言ってることが変わる指導医は困りものだとぼくは思うけどなあ」

D「研修医と指導医では「見ている世界」が違うんだよ。研修医にはAとBが同じ胸痛に見えていても、指導医から見るとそれは異なる胸痛だ。Aは入院、心カテとなり、Bは外来フォローとなる。研修医には一貫性がないように見える。抗菌薬なんか典型的だな。研修医は馬鹿の一つ覚えで同じ抗菌薬ばかり出したがる。異なる患者の異なるところが、見えてないんだよ」
S「まあ、指導医でもなんとかの一つ覚えで同じ抗菌薬ばかり出してる人も多いですけどね」

D「珍しく辛口じゃないか」
S「ぼくじゃありません。岩田健太郎っていう変わった感染症屋の受け売りです」
D「あいつの言ってることは信用できないから、話半分に聞いとけ」
S「でも、分かりました。確かに研修医からは一貫性がないように見えている。じつはそれは指導医が"違うものを見ている"からなんですね」

D「そう。だから、大事なのは説明だ。こないだのAと、今日のBはどう違うのか、"指導医の見ている世界"を見ているような追体験をさせるんだ。細かく、丁寧に、しつこく、我々が"当たり前"と思っていることを説明するんだ。教育とは畢竟、手間ひまかけるってことなんだよ」
S「珍しくまっとうなコメントですね」
D「岩田健太郎にはこんなセリフは言えまい」

S「でも、分かりました。ぼくには当然と思っていた世界観を研修医が体感していなかった。だからぼくの言っているこが一貫していないように錯覚したんですね」
D「研修医は未熟だ。その未熟さを甘く見てはいけない。黙っていても分かってくれる、みたいな甘い幻想は捨てなければならない。口を酸っぱくして丁寧に説明しても分かってもらえない。そのくらいに考えておくのが正解だ」
S「はい」

D「それに医学の世界はどんどん進歩する。今日読んだ論文で、これまでの診療態度が変わるなんてこともある。学問の世界では朝令暮改はOKなんだ。何十年も首尾一貫して同じことしかしない、ってのが間違った医療のあり方なんだ。研修医教育も然り。どんどんバージョンアップし、やり方を新しくしなければならない。俺なんて、去年と今年では教え方、全然変えてるぞ」

S「そうですか?毎年同じ話ばかりしてるように見えますが」
D「お前が見ている世界観といっしょにすんな」
S「うう、未熟な研修医扱いされた~」

第22回「言動は一貫させよう、ただし」その2 終わり

続く。

この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。

[楽園はこちら側 2016年12月13日より転載]

楽園はこちら側
http://georgebest1969.typepad.jp/blog/

この記事の監修・執筆医師

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