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誰でもできる研修医指導28

岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)
岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)

S「D先生、"相手の話を聞く"ティーチングが他にも効能があるってどういうことですか?」
D「それはだな、相手の話を聞く態度で指導医が研修医に教えていると、『そうか、いつも"相手の話を聞く"態度が大事なんだな』って言外に悟るようになるんだよ」
S「うーん、なんのことだか、意味が分かりません」
D「3年目から5年目くらいの若手後期研修医あたりの外来とか、ムンテラ(ここでは患者家族への説明のこと)を見てると、とても不満なんだ」

S「どうしてですか?」
D「しゃべりすぎなんだよ。ずっと患者に喋りすぎ。しかも相手の目を見て、理解度も確認せずに一方的に喋り、一方的に説明している。たいていの場合、患者家族は理解していない。当惑した表情を浮かべている。ちゃんとアイコンタクトを取っていれば、"あ、今俺の説明通じてないな"と察することができるから、言葉を変えて、語調を変えて、言い直すこともできる。"いま、あなたの病気についてどのようにお考えですか"とか"治療について聞いておきたいことはありませんか"と積極的にこちらから質問や発言を促せば、もっとよいコミュニケーションになるのに。基本的に、若手外来の医師たちは喋りすぎだ。真面目で優秀とされている奴らほどこの傾向が強い」

S「うーん、そうかもしれませんね。確かにぼくも喋り過ぎだなあ」
D「今、自分のことを真面目で優秀だと思ってただろ」
S「う、そこで揚げ足取りですか」
D「もっと黙ってればいいんだよ。患者の話を聞けばいいんだ。相手が心配していること、困っていること、不思議がっていることを説明すれば良いんだ。彼らは病気について百科事典的な知識が欲しいわけでも、その病気に関する専門家になりたいわけでもない。"自分が心配なこと"が知りたいんだ。それに答えてあげればいいんだ。それは些細な事かもしれない。たとえば、ネットで出ているデマは本当なのか?みたいな。でも、そういうのに丁寧に対応してあげるのは大事なんだ」
S「そうですねえ」

D「結局、研修医教育も患者ケアの延長線上にあると考えるべきなんだ。研修医教育中に患者ケアのテクニックを使えば、そのテクニックは言外のうちに研修医たちに伝わる。回診のときに一方的にしゃべくって教えておいて"患者の話を聞きなさい"なんて教えても、説得力ないだろ。こういう隠れた教育、隠れたカリキュラム(hidden curriculum)の役割は大きいんだ」
S「あ、なんか今、すごいまともな発言した」
D「その失言癖、なんとかしろ」

第28回「まずは考えさせよう、そして意見を聞こう」その2 終わり

続く。

この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。

[楽園はこちら側 2016年12月21日より転載]

楽園はこちら側
http://georgebest1969.typepad.jp/blog/

この記事の監修・執筆医師

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