心理学などの科学研究の例を紹介しながら、人の外見的な印象や魅力が顔や身体のどのような特徴によるものか、また、心や脳の仕組みによってどのように感じられるのかについて、専門家である川畑秀明氏(慶應義塾大学文学部心理学准教授)が明らかにしていくコラムです。
今回は、職業と外見の関係についてです。2回に分けてお話しします。
私は大学で、教員・研究者として働いています。皆さんは研究者というと、どのようなイメージをもっていますか? 知的で真面目で偏屈で...そのような内面(パーソナリティ)を有していると思われるでしょうか。
では、外見はどうでしょう。映画では、ハリソン・フォード演じるインディー・ジョーンズや、トム・ハンクス演じる『ダ・ヴィンチ・コード』のラングドン教授など、大学の研究者のファッションと言えば、ツイードのジャケットにジーンズ。エレガントなイメージはないかもしれません。
私は普段、スーツを着て仕事をしていますが、大学にはいろいろな服装の人がいます。ジーンズにTシャツの人も少なくないですし、どのような服装でも研究者としての仕事に差しさわりはありません。外見で個人の能力が評価されてはならないし、それは研究者に限らず、どのような職種においても「基本的に」当てはまります。
しかし、私たちは、ある特定の職業に就く人物に対するイメージを持っています。例えば、銀行や保険会社のような金融機関で働く人は、真面目で固く、外見にもそのことが伺えるであろうと私たちは思い込んでいます。そうした固定観念が、内面にも外見にも「こうあるべき」という要求を引き起こすのです。その職業の人物らしさを「職業プロトタイプ」と呼ぶことがあります。