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誰でもできる研修医指導58

S「ああ~よく寝た。D先生、おかげでリフレッシュできました」
D「それはなにより。顔色も良くなったじゃないか」

岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)
岩田健太郎(神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長)

S「確かに、寝不足の顔って基本、青ざめてますよね」
D「患者を不安にさせる顔だ。一晩寝ないでいた当直明けの医者は、酔っぱらい程度の判断能力しかないんだぞ。当直後の休養は権利ではない、義務だ。飛行機のパイロットが居眠りしてたら、イヤだろ」
S「イヤどころの騒ぎじゃないですよ」
D「医者だって同じだろ。俺も昔は外来で患者の心音聞きながら寝たり、オペ中に寝たり、心カテ後の鼠径部抑えながら寝て患者の股間に顔を突っ込んだり、いろいろやらかしたが全部不適切だ(特に最後)。もっと「普通の目線」が我々異常人集団の医療界には必要だ」
S「先生が一番異常なんですけどね。まあ、当直明けの医者のパフォーマンスが落ちる、の研究は存じてますよ。分かってはいるんですが、今の日本の文化だとそれはなかなか受け入れがたいということで、、、」
D「だからお前はアホなヘタレ指導医だというんだ。お前が見てるのは、周囲の医者の評判じゃないか。見るべきはそこじゃない。患者の安全、治療の成功率、医療の質の向上だ。患者の安全を損ない、治療の失敗リスクを高め、医療の質を落とすくらいなら、周りの医者の見る目なんてどうでもいいはずだ」

S「そ、それは正論だとは思いますが、、、ぼくだけやるというのも、、、」
D「俺だってその一人だ」
S「先生は最初から社会性なくて、周りの空気を読まないというコンセンサスが取れてますから」
D「じゃ、お前もその仲間になれ。いいか、日本の医療界(の多く)に理念はない、理性も論理もアウトカム志向もない。あるのは同調圧力と空気作りだけだ。だったら、空気を作ればいいんだ。いいか、すべての指導医が、そして研修医が当直明けにすぐに帰宅する「空気」を作ってみろ。そのまま病院に残って外来やらオペに行く医者に向けられる視線は絶対に厳しくなる。「この先生、なにか勘違いしてるんじゃないかしら」「患者のこと、本当に考えてるの?」「奥さんと仲が険悪になって帰宅しづらいんじゃない?」という悪評(デマを含む)がナースや患者の間で沸き起こるはずだ」
S「まあ、そこまでひどくはないかもしれませんが、そういうところはありますね」

D「結局、医者もナースも患者ですら、「空気」だけが大事なんだよ。だから空気を作れ。もちろん、最初は同調圧力に抗うわけだから難しいかもしれない。パイオニアとは常に孤独なものだ。しかし、考えても見ろ。昔は、採血時に手袋を着用するのは「非常識」だった。マスクして患者見るのは「失礼」とすら言われた。しかし、いまやそのような「空気」ができている。多くの医療者はなんで手袋して採血するのか、その理由を理解してない。多くの医療者は何も考えずにたら~んとマスクを着用している。でも、それでいいんだ。医者やナースや患者を賢くしようと考えるな。あいつらはどうせ、そんなに賢くないし、賢くもならない。それより、あいつらに「空気」に同調させるほうが戦略的だ。そのほうが、よりよいアウトカムが出る」
S「D先生、基本、同僚とか患者さんとか、信用してないでしょ」
D「Trust nobodyが俺様の座右の銘だあ」
第58回「休養は権利ではなく、義務である」その2 終わり

続く。

この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。

[楽園はこちら側 2017年2月22日より転載]

楽園はこちら側
http://georgebest1969.typepad.jp/blog/

この記事の監修・執筆医師

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