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2月20日:頭皮冷却による抗がん剤による脱毛防止(2月14日号米国医師会雑誌掲載論文)

   自らもガンに罹患した経験を持つ岸田徹さんのガンノートは、岸田さんならの発想で始まった「ガン経験者のガン経験者によるガン経験者のための「生のインタビュー型」情報発信番組(http://gannote.com/)」で、大きな注目を集めている。

   医師や研究者にとっても、習った知識からは思いも及ばないガン患者さんの視点に触れることができる。ぜひ医学部や看護学部の学生さんには見てもらいたいと思う。かくいう私自身は、数回程度しか参加したり、番組を見たことはないが、いつも新しいことを学ぶ。

   ガンの化学療法の副作用として、特に女性の患者さんの最も精神的ショックになるのが脱毛のようだ。この抗がん剤による脱毛を抑える方法としてずいぶん昔に考案されたのが、抗がん剤の投与前、投与中、そして投与後の1−2時間頭皮を冷やす方法だ。私がこの方法を知ったのはずいぶん前だが、ガンノートの話を聞く限り、我が国ではまず普及していない。おそらく、医療提供側で、脱毛を当たり前の結果として許容しているからではないかと勘ぐっていた。

   今日紹介するHellen Diller Family Comprehensive Cancer Centerからの論文は乳がんでアジュバント化学療法を受ける患者さんが経験する脱毛を頭皮冷却が抑えることができるかどうか調べた治験で、2月14日号の米国医師会雑誌に掲載された。タイトルは「Association between use of a scalp cooling device and alopecia after chemotherapy for breast cancer(乳がんに対する化学療法後に発生する脱毛への頭皮冷却の効果)」だ。

   論文を見たとき、ずいぶん昔に開発された方法に関する治験が今頃米国医師会雑誌に掲載されるのかと驚いた。読んでみると、ヨーロッパでは普及してきたが、頭皮冷却の効果が一定しないことや、脱毛のショックを医療側が理解しないこと、そしてデバイスに対してFDAの医療機器としての認可が進んでいなかったこと、などの理由で米国でもあまり普及していなかったようだ。

   この状況を打開すべく、この研究では5医療機関が合同で、ステージI-II乳がん患者さんで手術と合わせて行われるアジュバント化学療法(分子標的薬以外の化学療法剤による)を受けた患者さん約100人に頭皮冷却療法を行い、行わなかった16人のコントロールと比べた研究だ。脱毛は0から完全脱毛までを25%刻みにグレード0から4まで評価している。

   コントロールが極端に少ないのは、研究途上で頭皮クーリングの効果がはっきりしたからだろう。結果はめざましいもので、頭皮クーリングを受けなかった全例で50%以上頭髪が失われ、15人ではほぼ完全脱毛と言えるほどの75%以上の頭髪が失われているのに対し、頭髪クーリングを行うと、67%で脱毛を50%以下に抑えることができ、全く脱毛なし、及び25%以下にとどまった患者さんが実に35%に達している。この結果、自覚的なショックも30%近く抑えることができている。医療機器としては極めて高い効果があると結論できる。従来指摘されていた転移の促進も、2年経過観察では問題になっていない。

   米国で普及していないことや医療費の問題から考えると、化学療法には脱毛はつきもの、と我が国で普及が進まないのもわかる。しかし、病は気からとも言える。小児、及び女性については、わかっていても経験するとショックを伴う脱毛を予防する手段を認めて欲しいと思う。

[NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ) 論文ウォッチ 2017年2月20日より転載]

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