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3月1日:先進国の平均寿命の予測(2月21日号The Lancet掲載論文)

   昨年人間の寿命の限界は何才ぐらいかについて調べた、アルバート・アインシュタイン大学のグループがNatureに掲載した論文を紹介した(http://aasj.jp/news/watch/5880)。

   この試算は、生まれた時の平均余命ではなく、寿命の限界についてのものだったが、平均寿命とはだいたい25~30才ぐらい離れている。では、平均寿命はこの限界を目指して伸び続けるのか、様々な推定が行われている。この推定は、年金などの設計には重要で、高齢化や長寿化を正確に予測できなかった国は、年金や社会保障の破綻に直面する。

   今日紹介する英国インペリアルカレッジ・ロンドンからの論文は、比較的正確な統計が得られる35カ国について、今から13年後の2030年時点での平均寿命を推定した研究で、2月21日The Lancetに掲載された(http://aasj.jp/news/watch/5880)。タイトルは「Future life expectancy in 35 industrialised countries: projection with Bayesian model ensemble(工業化が進んだ35カ国の将来の余命:ベイズモデルを組み合わせて計算した予測)」だ。

   これまでも同じような研究は多く行われているが、この研究はベイズ推計のための複数のモデルを作り、各モデルからの推計値を平均して予測値を得ている点が売りだ。詳しい方法は見ていないが、例えば乳児死亡率から体脂肪率や喫煙率の推移、あるいは感染症を含む様々な病気の死亡率など異なる観点から21種類のモデルを作り、次に過去のデータに基づきそれぞれのモデルで推計値を算出、それを実際の平均寿命と比べた乖離を計算、これに基づき各モデルの定数を補正した上で、最後に得られたデータを用いて補正した各モデルで2030年の予測を行い、平均値を平均余命として算出している。

   さて結果だが、
1)35カ国すべてで平均寿命はまだ伸びる。
2)最も伸びが大きいのは韓国の女性で、2030年の平均寿命はなんと世界初の90才を超えるが、他の国は90才以下で止まる。韓国男性も、2010年の20位が4位に躍進する。
3)2010年で女性のトップは当然日本だが、寿命の伸び率は低下し、2030年には韓国、フランスに続く第3位になる。
4)男性は2010年でオーストラリア、スイス、スウェーデンに続く4位だが、2030年には10位に落ちる。
他の国も詳しく出ているが、我が国と、長寿国トップに躍り出る韓国についての試算を中心に紹介した。

   問題はなぜこのような結果になるかだが、これは各モデルでの予測値を眺め直すとわかるはずだ。韓国の女性が、世界初の90才越えを果たすのは、体脂肪率と血圧が低いこと、そして喫煙者が少ないことが大きな要因になっているようだ。女性について言えば、我が国は韓国より西欧化してしまっているのかもしれない。

   この結果は、長生きしたい個人から見ると寂しい気もするが、悪い話ではない。年金や介護保険については、平均余命の伸びが高いほど、計画が難しく、現役世代への負担になる。結局高齢者の社会保障は、人口統計的に先が見えること、疾病率が変わらないこと、の条件が整うと設計がしやすい。従って、余命の伸びが鈍化した今こそ、社会保障の根本的な改革が行えるチャンスだ。これに失敗すれば、おそらく我が国に明るい未来はない。

[NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ) 論文ウォッチ 2017年3月1日より転載]

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