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これからは高齢者も社会の支え手に 超高齢社会を明るくしたい【医師団からのTEIGEN】

   Aging Styleに参加する医師や専門家らが、QOLを高めるために何が必要なのかを専門分野ごとに「私の提言」として発信します。

   今回は、日本老年学会と日本老年医学会が合同で立ち上げたワーキンググループの座長も務めた大内尉義・虎の門病院院長が、新しい高齢者の定義を定めるに至った経緯や今後の展望について綴ります。

「高齢者」の定義に医学・生物学的根拠はない

   わが国を含む多くの国で、高齢者は暦年齢65歳以上と定義されています。

   このような定義になったのは、1956年に世界保健機関(WHO)が65歳以上の人口比が7%を超えると「高齢化社会」と定義したことが始まりとされ、当時の欧米、日本の平均寿命が62~70歳くらいであったため、そのまま受け入れられたのです。しかし、この定義には医学・生物学的な根拠はありません。

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院院長・大内尉義氏
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院院長・大内尉義氏

   さて、日本では、近年、個人差はあるものの、この高齢者の定義が現状に合わなくなっています。

   高齢者、特に75歳未満の前期高齢者は、まだまだ若く活動的な人が多く、高齢者扱いをすることに躊躇し、違和感を感じる人が多くなっています。

   実際、内閣府が最近行った国民アンケート調査(参考資料1)でも、何歳以上を高齢者とするかという問いに、70歳以上、75歳以上とする回答が多いのです。65歳以上という回答は6.4%と低く、80歳以上とする回答が5年前に比べ大幅に増加していることも国民の高齢者に対する意識の変化を示しています。

   また、いろいろな高齢者コホート(集団)での追跡調査のデータを調べてみると、歩行速度、握力などの運動機能、活動能力指標でみた生活機能、疾病の受療率や死亡率、要介護度、知的機能、残存歯数など、多くの身体機能が以前に比べて5~10歳、指標によっては20歳若返っていることが示されており(参考資料2)、これは多くの人々の実感に合っていると思われます。

超高齢社会を明るく活力あるものにする

   このようなことから、日本老年学会、日本老年医学会では、2013年に高齢者の定義を再検討するための学際的な合同ワーキンググループ(WG)を立ち上げ、いろいろな角度から議論を重ねてきましたが、2017年1月5日にその議論の結果を発表しました。

   それは、75歳以上を高齢者とし、従来、前期高齢者とよばれた65~74歳を准高齢者とすべき、という提言です。また、高齢者の中では、90歳以上を超高齢者としました。

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   65~74歳の呼称について、「高齢」という言葉をなくすことも議論されましたが、やはり体力の衰えを感じる人が増加するこの年代の人々に対して、10年後の高齢期の訪れに向け、健康、仕事などいろいろな面での準備を促す目的で、あえて「高齢」という言葉を残したのです。

   それでは高齢者の定義を再検討する意義はどのようなことでしょうか。

   その目的は、高齢者の定義を再検討することにより、支えられるべき存在としての「高齢者」の意識や立ち位置を、社会の支え手でありモチベーションを持った存在としてのポジティブなものに変え、結果として、迫りつつある超高齢社会を明るく活力あるものにすることにあります。

次世代の健康づくりが必要

   個人差はあるものの、准高齢者、高齢者には十分、社会活動(有償、無償労働をはじめとする社会参加)を営む能力のある人がおり、このような人々が就労やボランティア活動など社会参加できる社会を創ることが、今後の超高齢社会を活力あるものにするために大切なのです。

   従来、高齢者とされてきた人々の社会活動は、個々人の健康維持に役立つだけでなく、若い世代の負担を軽減するなど、社会保障を持続可能なものにするためにも重要です。もちろん、有償労働に携わらないという選択肢もある訳で、そのような多様な生き方も許容するのが前提です。

   また、当然ですが、既にフレイル(高齢になることで筋力や精神面が衰える状態)などに陥っている、いわゆる社会的弱者のためのセーフティネットは今まで以上に整備されなくてはいけないと考えています。ただ、高齢者の身体能力の若返り現象がこの後も続くかどうかは保証されておらず、あらためて、食育、体育など、次世代の健康づくりの啓発が必要です。

   われわれの今回の提言が、明るくプロダクティブな健康長寿社会を構築するという、国民全員の願いの実現に貢献できることを期待しています。

[執筆/大内尉義 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院院長]

医師・専門家が監修「Aging Style」

参考資料
(1)内閣府:平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査
http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h26/sougou/zentai/index.html

(2)レポート 第29回日本老年学会総会 シンポジウム1
高齢者に関する定義の再検討―老年学会・老年医学会WGの論議をふまえて、Medicament News 2200号(2015年7月5日)p20-21

この記事の監修・執筆医師

大内 尉義
大内 尉義(おおうち やすよし)

東京大学名誉教授・虎の門病院院長・日本老年医学会前理事長

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