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6月11日:MRIを用いた自閉症の早期診断(6月7日号Science Translational Medicine掲載論文)

   脳内の領域間の結合を調べる機能的MRI検査により、自閉症の背景には脳内ネットワークの形成異常が存在することが明らかになっている。とすると、脳内各領域の結合を早期に診断して、できるだけ早く自閉症に対する治療プログラムを始め、ネットワークを正常化させる可能性がある。

   特に、幼児の脳はフレキシビリティーに富んでおり、介入プログラムにより大きく変化できることは、3歳までの言葉の発達を見ておればよくわかる。

   しかし、現在自閉症が診断されるのは2歳以降で、脳はフレキシブルとはいえ、時間が経つほどネットワークを変化させるのは難しくなってしまう。もちろん、こんなことはよくわかっているため、自閉症を早期診断するための方法を開発しようと努力が続けられており、このサイトでも2013年11月に一つの試みを紹介した(http://aasj.jp/wp-admin/post.php?post=686&action=edit)。

   この時紹介した研究は、6ヶ月齢以前の乳児の行動を観察する方法だったが、今日紹介するノースカロライナ大学からの論文は6ヶ月齢のMRI 検査を用いて自閉症を予測する方法の開発で6月7日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Functional neuroimaging of high-risk 6 month old infants predicts a diagnosis of autism at 24 months of age (6ヶ月齢の自閉症ハイリスク児童の機能的MRI画像検査により24ヶ月齢での発症を予測できる)」だ。

   この研究は、遺伝的に自閉症発症リスクの高い幼児のコホート研究の一環として行われている。この中の6ヶ月齢で詳しい機能的MRI検査が行われ、24ヶ月齢で確定診断がついた59人を対象としている。通常自閉症の発症率は1.5%程度だが、今回対象として選んだ59人のうち、約2割、11人が24ヶ月齢で自閉症と診断された。

   MRI検査では脳内230領域について、それぞれの領域間の結合の強さが計算している。一方、24ヶ月齢の診断時、知能、社会性、行動についての詳しいテストを行い、数値化している。

   それぞれの数値と、脳領域間の結合の強さをコンピュータで相関させ、可能な結合の4%、974結合が、24ヶ月での診断と相関していることを突き止める。

   次にこの結合を指標化して24ヶ月齢での診断と対応するかどうか調べると、MRIから計算する指標だけで症状に基づく診断結果を予想できることが明らかになった。

   これが正しいかどうか、さらに交差検証も行い93%の診断率があることも確認している。要するに、遺伝的リスクがある幼児については、6ヶ月齢で自閉症を診断できるという結論だ。

   一旦診断法が確定すると、今後、遺伝的リスクのない子供についても同じ方法を試し、早期診断が可能か調べられるだろう。自閉症が、脳内ネットワークの形成異常だとしたら、原因に関わらず診断する方法は見つかると思う。そして、最初に述べたように、早期診断の意義は極めて大きい。

   問題は、MRI検査で、乳児の自然睡眠時を狙って、頭の動きを感知して画像データを補正できる機械が必要で、すべての子供を調べるには大変な費用がかかる。従って、例えば脳波や、近赤外光イメージングのような安価な方法に置き換える必要があり、また計算機のキャパシティーの問題も出てくるだろう。

   しかし、自閉症児の持つ優れた点を伸ばしながら、社会性やコミュニケーションなどを現在の児童に合わせるといった究極の治療のためには、最も必要な分野だ。さらなる発展を期待する。

[NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ) 論文ウォッチ 2017年6月11日より転載]

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