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【不定期連載 第2回】新米パパのがん闘病記 治療法、なにをどう選ぶ?人参ジュースからプレシジョン・メディシンまで ~セカンドオピニオン編~

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第一子誕生を翌月に控え受診した健康診断で、食道に腫瘍があることが発覚!大きな病気とは無縁だった働き盛りの私が検査入院することに。その検査入院でついに腫瘍の正体がわかりました。

第1回~発覚編~はコチラ

2.セカンドオピニオンってどこにお願いすればいいの?

A病院で検査入院が始まった。2012年7月のこと。
内視鏡、CT、PETCT、穿刺術...こんな感じの検査だったと思う。詳しい結果が出るまでに、主治医からは考えられる可能性を告げられた。

『まず、一番可能性が高いのが平滑筋種。これは悪性じゃないから手術すれば済む。つぎにGIST。これは...ちょっとタチ悪いねん。あと、可能性低いけど、平滑筋肉腫。この大きさでこれやとかなりヤバイねん』

親しみやすい、関西弁のタメ口で語られたのはこんな内容だった。「タチ悪い」「ヤバい」ってどんなんやねん・・・今から思えば、段階を踏んで伝えることでショックを和らげる狙いがあったのかもしれない。しかし受け手である私は「へぇー、そうなんだー、すごいねー」と、けものフレンズのサーバルちゃん的楽観脳しか持ち合わせていなかった。

そして告知の時が訪れる。
検査入院中、別室に呼ばれた。

『GISTやったわ...』
「え?あのタチが悪いって言ってたやつですか?」
『そう。』
「でもがんじゃないんですよね?」
『いや、まあ、悪性やねん...』
「...」

ドラマのように、泣き崩れたり、頭が真っ白になったりということはなかった。
なんでこんなことに・・・いつもコンビニのおにぎり後ろから取ってるからか。でも世の中もっと悪い奴もいるはず。どうやら原因は不明らしい。

腫瘍の大きさからして悪性度は高そうだった。しかし幸い手術もできるようだし、完治の可能性がないわけではない。死ぬかもしれないとは感じたが、割と冷静に受け止めることができた。阪神大震災に時に味わった、圧倒的な死の予感を思い出せば恐怖も薄らいだ。

ただ、妻に電話で結果を伝えたとき、一瞬嗚咽を飲み込んだことはここだけの話。先の見えない不安、周囲に取り残されるような孤独、様々な感情が刹那に渦巻いたのだろう。私も人の子だったようだ。あ、そうそう、前回お伝えしたベンチプレスの重量は120kgだったけどスクワットは140kgね(みなさん気になってたと思うので)

さて、その夜から情報収集が始まった。

GIST(消化管間質腫瘍)という聞きなれない病だったが、概要はすぐに把握できた。さすがGoogle先生(ただGoogle先生に教えてもらえるのは概要までで、本当に欲しい情報には届かないということがわかるのはこの後の話)

・10万人に1~2人の希少がん。肉腫に分類される。
・胃あるいは小腸で発見されるケースがほとんどで、私のように食道にできることはごく稀らしい。
・GISTの最も有効な治療法は、外科手術。
・グリベック(イマチニブ)という薬の登場で飛躍的に予後が改善されたらしい。
・通常がんではステージという分け方があるが、GISTの場合はサイズや腫瘍の形に関係なく再発の可能性があるため、腫瘍サイズとともに増殖力(腫瘍細胞の分裂の速さ)や腫瘍の発生場所を加味して、再発リスク別に「超低リスク」「低リスク」「中リスク」「高リスク」の4つに分類されるらしい。これは手術で腫瘍を切り取って病理検査に出してみないとわからない。ただ私の場合腫瘍径が8cm大と大きいので悪性度は高そう。

というわけで、A病院の医師からはできるだけ早い手術を勧められた。食道を全摘し、その後3年間アジュバント療法(再発防止のための抗がん剤治療治療)をしましょうというのが提示された治療方針だった。

が、私には2点気になることがあった。まずひとつめ。食道を全摘したくなかった。医師からの説明や、ネットの情報から食道全摘術は非常に後遺症の大きい手術だと知ったからである。なにしろ当時趣味は食べ歩きと筋トレ。美味しいものをたくさん食べたいし、プロテインも飲まなければならない。消化機能が大幅に落ちては自分が自分でなくなってしまう。そしてふたつめ。A病院は一流と言われる大学病院である。難易度の高い食道の手術に関しても実績は十分。

ただGISTの説明になると医師の説明の語尾に「・・・らしいねん」という親しみやすくも、頼りない関西弁がもれなくついてくるのである。

「・・・らしいねん」このままこの病院で治療を受けては後々後悔することになるかもしれない。セカンドオピニオンというカードを切ることにした。噂では、セカンドオピニオンを希望すると医師があからさまに嫌な顔をしたり、怒られ、転院を促されることもあると聞く。恐ろしや。私も世間話から切り出し、先生の人柄を褒めつつ・・・と、少し気を遣ったが、私の担当医さんは全く嫌な顔をせず紹介状を書いてくれることに(普通のことなのかもしれないけど、ありがたし。何もかもが初体験のがん患者は不安の塊。快い対応が心身の負担を大きく軽減してくれるのである)。手術の緊急度は高めとの見方で、最短で手術可能な2週間後に仮の手術予約をし、その間にセカンドオピニオンを受診することにした。

しかしここで問題が出てくる。どこにセカンドオピニオンをお願いしていいかわからないのだ。
そこで3つのルートから情報収集を開始することにした。
①知人に相談。医療に明るい人を紹介してもらう。
②ネットと書籍で自分で調べる。
③患者会など患者のネットワークから体験者ならではの情報を収集する。

①は結局会社の上司が医療に関係する方を紹介してくれ、関西の消化器外科の名医と言われる医師、信頼できる病院をピックアップしていただくことができた。

②ネットを見ると、どうやら食道の手術は消化器系の中でも最も難易度が高いことがわかった。後遺症も大きいらしい。本屋に行くと「病院の実力」や「名医ランキング」なる本が平積みで置いてあった。Webでも「がん種」+「名医、病院、実力、選ぶ」等を入力すると大体それらしいサイトがヒット。開胸、開腹、胸腔鏡、腹腔鏡等、手術の術式別や手術以外の治療(化学放射線療法)みたいな治療実績データがベースとなっている。サイトや書籍によっては、その病院の特徴やがん種によって選ぶポイントなども記載されている。しかしながら、希少がんかつ、その中でもさらに珍しい食道にできたGISTに関する治療についてはデータを見つけることができなかった。なので、食道がんの実績を参考にすることに。すると、大体①で教えていただいた傾向と一致した。だから正しいというわけではないけれど、がん医療界の常識を知り、「どこかに知る人ぞ知るスーパードクターがいるはず」という終わりない幻想から抜け出して、納得して次のステップに進むには有益な工程だったと思う(標準治療が適用できる段階においては、なのだけど・・・)

③これは人とのコミュニケーションに難がある私に代わって、妻ががんばってくれた。感謝である。色々と世話を焼いてくれる妻のおかげで私は未だに飛行機のチケットの取り方も知らない。いずれどこかのタイミングで梯子を外して、慌てふためく私を眺めながらほくそ笑む気なのかもしれない・・・脱線したが、妻はネットでGISTERSなる患者コミュニティをみつけ、掲示板やSNSから情報収集をしてくれた。そこで、「GISTは希少がん故、医師によって知識・経験の差が大きい。できるだけ専門医を受診すべきである」という意見を患者の先輩方からいただいた。この助言は今から思うと後悔のない治療を選択する上で非常に大きかった。

以上から治療を受ける病院・医師を決める上で、私なりに3つの指針を得ることができた。
①自身の病気(GIST)の専門家であること
②適用される手術(食道の手術)に対し、十分な実績があること
③命が最優先だが、できれば臓器(食道)温存の可能性等、体にかかる負担とQOLの低下が最小限であること

この後、この3つの指針を持ち、4つの病院でセカンドオピニオンを受け、治療を受ける病院を決定していく。長女が誕生する一週間前である。

【第三弾】転院、治療法の選択へ。恐怖の人参ジュース

著者

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名前:谷島 雄一郎(やじま ゆういちろう)
1977年生まれ。一児のパパ。大阪ガス(株)近畿圏部ソーシャルデザイン室に勤務。社会課題の解決や、地域活性化に携わる。長女が誕生する直前の2012年7月、食道に希少がん(GIST )が見つかる。当時34歳。既に転移もあり、手術をするも1年後に再発。以来、様々な治療を繰り返しながら防戦中。15年9月、「がん経験を新しい価値に変えて社会に活かす」をテーマにしたプロジェクト「ダカラコソクリエイト」を始動。働く世代でがんを経験した自分たちダカラコソできることを医療の枠を超えて形にすべく活動している。
http://www.dakarakosocreate.com/

[がん情報サイト「オンコロ」2017年8月8日より転載]
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