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10月18日:抗PD-1抗体治療経過を徹底的にモニターしてみる(11月2日号Cell掲載論文)

   メラノーマ治療からスタートし、抗チェックポイント治療は今や様々な腫瘍治療の中心の地位を占めつつある。ただ、効くか効かないかは出たとこ勝負という予測不可能性の問題は今も解決できていない。要するにガンに対する免疫反応が枯渇するのを止める治療と考えられるので、PD-L1などのリガンドをはじめ、キラーT細胞マーカーなどを指標として効果を予測する論文が多く発表されているが、まだまだ決め手に欠けるのが現状と言えるだろう。とすると、多くの患者さんで、治療前後の免疫反応や、ガン側の変化を徹底的に調べたいところだが、患者さんの協力を得ることは簡単ではなかった。

   今日紹介する米国スローン・ケッタリングガン研究所からの論文は、なんと68人もの患者さんの協力を得て、抗PD-1抗体を用いたチェックポイント治療の、治療前、治療中のガン組織をいただいて、その組織を様々な角度から徹底的に調べた研究で、11月2日号のCellに掲載された。タイトルは「Tumor and microenvironment evolution during immunotherapy with Nivolumab(ニボルマブによる免疫治療中の腫瘍とその環境の進化)」だ。

   このニボルマブは我が国ではオブジーボとして今最も注目されている抗PD-1抗体だが、この研究では治療前、および治療開始後1ヶ月目に腫瘍組織をバイオプシーで採取、ゲノムや遺伝子発現について詳しく調べている。対象となった患者さんの半分は、すでにもう一つのチェックポイント治療抗CTLA4抗体治療を行って効果がなかったためニボルマブに切り替えた患者さんが使われている。

   治療効果だが、全く効果なしが半数、ガンは縮小しないが大きさは安定しているグループが3割、そして残りの2割で1ヶ月後ですでにニボルマブの効果が見られている。これは他のデータとほぼ一致している。この治療効果と相関するガンおよび周囲組織の構成を、ゲノムと遺伝子発現から調べたというだけの研究だが、これだけの症例から組織を集めたことが重要だ。詳細を省いて、重要な結果だけを箇条書きにまとめると、

1)これまでの報告と同じで、メラノーマのゲノムの変異が多いほどニボルマブの効果がある。
2)ニボルマブの治療の効果がある患者さんでは、ガンの突然変異や変異の結果起こるガン抗原の数は著しく低下する。すなわち、変異を持つガンはほとんど免疫反応で除去される。一方、効果のないグループのガンでは突然変異の数が増える。
3)周囲細胞を含んだ組織の発現遺伝子を比べると、効果が見られるガンでは免疫や炎症反応に関わる遺伝子が発現している一方、低下するのはガンの増殖に関わる遺伝子。
4)T細胞受容体CDR3領域の配列からガン組織に浸潤しているT細胞のレパートリーを推定できる。このレパートリーは、治療に反応する人ほど多様で、また効果がある人では特定のレパートリーが増加していることが明らかになった。また、抗CTLA4療法を既に受けた効果が得られなかった患者さんの多くは、抗体治療にもかかわらずT細胞が増殖できず枯渇したことで治療が失敗しており、これをニボルマブで増強できることも示している。

   例えばエクソームにしても150coverageのレベルで解読するなど、徹底的なデータ集めがされており、協力した患者さん共々頭が下がるが、まとめてしまうと、

   T細胞はガン特異抗原が多いほど多くのクローンが反応し突然変異を持つガンを叩く結果、逆に残ったガンの突然変異は減るように見える。したがって、ニボルマブ治療1ヶ月目で、突然変異が減っていなかったら、効果はないとして治療を打ち切る方がいい。一方、抗CTLA4治療が効かない場合も、ニボルマブが効く人が2割はいると思って、薬剤を切り替えることも問題ない。できれば、ニボルマブ治療前にエクソームを徹底的に調べて、突然変異の数やT細胞レパートリーを調べることは効果予測に役立つが、絶対ではない。

   など、まあ常識的な結論で終わっている。しかし、集められたデータは貴重で、ぜひ多くの医師や研究者に活用して欲しいと思う。

   実際に患者さんを見ている医師が、診療の中から思いついたヒントをこのようなデータベースを用いて確かめるようにする訓練が必要な時代が来たと思う。
[NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ) 論文ウォッチ 2017年10月17日より転載]

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