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10月27日NK細胞を標的とするチェックポイント治療の可能性(Natureオンライン版掲載論文)

   我が国ではチェックポイント治療というと、PD-1分子に対する抗体治療とほとんど同義だが、T細胞が長期間刺激されっぱなしにならないよう調節するチェックポイント分子の数は多く、免疫反応を一過性で終わらせるために、二重、三重の安全機構が働いている。現在臨床応用されているチェックポイント治療はPD-1とCTLA-4が標的だが、今後さらにいくつかの分子を標的とした抗体が出てくる可能性は高い。

   今日紹介するイタリア・ミラノにあるHumanitas大学からの論文はNK細胞にもチェックポイント機能が存在しガン治療の標的になることを示した論文でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「UK-1R8 is a checkpoint in NK cells regulating anti-tumour and anti-viral activity(IL-1R8はNK細胞のチェックポイントとして抗腫瘍免疫及び抗ウイルス活性を調節している)」だ。

   NK細胞は肝ガンの発生やガン転移を防ぐ役割を持っていることが従来から知られているが、NK細胞を直接操作してこの活性を高めようという研究はあまり見かけなかった。この研究は、おそらくIL-37の受容体として炎症の持続を抑えると考えられてきたIL1受容体の一つIL1R8の機能を調べるところから始まったようだが、最初ほとんどの血液細胞で発現が見られるIL1R8がとりわけNK細胞で強く発現しているという発見に端を発しているようだ。そこで、IL1R8ノックアウトマウスを用いてNK細胞の変化を調べると、ほんの少しだがNK細胞、特に成熟した段階が増加していることに気がつく。実際、よく気づいたなと思うぐらいの差だが、IL-18で誘導されるキラー活性はノックアウトマウスで一段と高いことを発見する。

   次に肝ガンを用いた発ガン実験で、IL1R8ノックアウトの影響を調べると、8ヶ月まではガンの発生を抑えることができる。また直腸癌の肝臓転移を調べる系でもIL1R8がノックアウトされると転移を強く抑えることも示している。そして、この抗がん作用が100%NK細胞に依存していることを示している。

   以上がガンについての結果で、 NK細胞にも活性の持続を抑えるチェックポイント機能があり、IL1R8がこの機能を媒介するシグナル分子で、この機能を抑制することでNK細胞活性を高められるという結果だ。

   NK細胞の多い肝臓での発ガンや、肝臓転移を抑制するための一つの手段として期待できるが、データを見ると効果はそれほど高くなく、PD-1やCTLA4を標的とするチェックポイント治療と比べると、大きく見劣りがする印象を持つ。おそらく、異なる標的に対する治療で、一般炎症を抑える効果があることを考えると、チェックポイントの併用療法の方向で、活路を見出してくるような気がする。

[NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ) 論文ウォッチ 2017年10月27日より転載]

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