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鏡に映る自分は無意識に「いい顔」している? 理想の自分と現実の違い

   自分の顔や全身のスタイルなど、見た目において「理想の自分」のイメージを持っていますか?

   多くの人は、理想の自分にできるだけ近づきたいと、健康や美容に気をつかったり、美容医療を受けたりなど、理想の自分を実現するべく行動を起こしていますが、現状に満足できている人はそんなに多くないでしょう。

   今回は、なぜ理想と現実に差が出てしまうのかを考えてみたいと思います。

ミス・アメリカは低栄養状態

   魅力的で憧れの存在ともいえる、ミス・ユニバース。世界中のスレンダーな美女が候補者として選ばれていますが、実は、歴代のミス・アメリカの身長と体重の比率を見ると、年々体重が減少傾向にあり、低栄養状態に陥っていることがわかります。

   一方で、世界保健機構(WHO)が示しているアメリカの一般女性の肥満度は、年々上がっています。これは、理想と現実の差が表れているひとつの例だと思います。

米メンタルヘルスの情報サイト「PsychGuides.com」のグラフを参考に編集部作成
米メンタルヘルスの情報サイト「PsychGuides.com」のグラフを参考に編集部作成

   近年、体形に関しては、ただ単に痩せているよりも健康的かどうかが重要視され、それが魅力的だという見方に変わりつつあります。実際に、フランスでは2017年5月、痩せすぎのファッションモデルは活動できないという法律が施行されました。これはモデルたちの健康を守るだけでなく、モデルにあこがれる若者たちが過剰な痩せ願望をもつことで拒食症になってしまうのを防ぐ目的もあります。

   また、自分の容貌への否定的な気持ちが強すぎると、身体醜形障害へと発展しやすいこともあり、その傾向は男性よりも女性のほうが顕著だということが研究で示されています。 以前もこのコラムで述べましたが、人の魅力と健康は密接に関わっています。緩やかに健康と関連付けた魅力的な自分を作っていくと考えるほうが、より楽しく人生を送ることができるのではないでしょうか。

「女優のような顔になりたい」はストレスを招く?

   顔の造作に関しては、女優やタレントの○○さんの様になりたいと具体的に理想とする人物を挙げる方もいます。

   でも、見た目を近づけるといっても限界はあります。現状の自分に満足できない状況が続けば、そのこと自体がストレスになり、悪くすると自己否定から精神のバランスを崩しかねないともいえます。

   「誰かになりたい」よりも「自分らしい魅力」は何なのかを一度、考えてみてほしいと思います。

 自分の顔の記憶は都合良く歪んでいる

   また、鏡に映った自分は無意識に「いい顔」をしているものです。無意識のうちに意識しているということでしょうか。逆に、本当に意識しないで写真に撮られた顔が、自分で思っているよりも疲れていたり、老けて見えたりするのはそのためです。

   最近ではスマホで自撮りをしてSNSにアップすることは日常的になってきました。そのたびごとに自分の顔写真を補正するなんてこともよくあるでしょう。あなたの顔の記憶は、親しい友人が記憶しているあなたの顔よりも不正確です。そもそも自分の顔は、目は少しだけ大きく口は少し小さく記憶されている傾向にあることが心理学の実験を通じて示されています (1)。

   スマホがこれほどまでに普及する以前の実験結果ですが、自分の顔を都合良く記憶している証拠の一つなのかもしれません。

   理想と現実に違いが生まれるのは、本当の自分の姿は意外と見えていないということも一つの要因でしょう。
[執筆:川畑秀明 慶應義塾大学文学部心理学准教授]

かわばた・ひであき/専門は感性心理学、認知神経科学。主観性と経験価値の心理とその脳メカニズムを研究し、主に、芸術、美、魅力、ユーザー・エクスペリエンス、デザイン、ユーザビリティ、感性教育、鑑賞行動の解明に努める。ヒトの主観はあいまいで非常に影響を受けやすいため、その影響の関係や因果性に関する心と脳の働きを明らかにし研究に活かす。著書に『脳は美をどう感じるか―アートの脳科学』(ちくま新書)がある。

医師・専門家が監修「Aging Style」

参考論文
(1)Wen, W., & Kawabata, H. (2014). Why am I not photogenic? Differences in face memory for the self and others. i-Perception, 5(3), 176-187.

この記事の監修・執筆医師

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