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男らしさから肥満、うつまで!テストステロンの男性更年期障害に対する効果!【抗加齢医学会レポート⑥】

多くの世の男性にとって間違いなく気になる問題がAGA(男性型脱毛症)や男性機能の衰え。「歳だからしかたないよね」と片付けられて、今までなかなか科学的に語られることが少なかったのが現状でした。しかし最近はその状況が一転。そのキーワードが男性ホルモンの1つ「テストステロン」です。

"真の男性ホルモン" テストステロン

このテストステロンはたくさんある男性ホルモンのなかで最も作用が強く,まさに"真の男性ホルモン"と考えられています。精巣(睾丸)で分泌されて,男性的な体になるための筋肉や骨格の発達に深く関係しています。医薬品としても使われており、男性の性機能不全や更年期障害などの治療に使われています。
今回は、第18回日本抗加齢医学会で発表された「テストステロン」関連の情報をまとめてみました。

軽症のうつ病にテストステロンが有効

男性は胎生期の妊娠6週目から24週目にかけてテストステロンが大量に分泌される時期があり、これによって脳が女性的特徴を失っていわゆる男性脳になっていきます。さらに、思春期には睾丸からのテストステロンの分泌が増加して、男性的な身体になっていきます。

このテストステロンは加齢とともに減少していきますが、今までは、性欲減退やEDなどと結びつけられるだけで、命に別状はないためにあまり大きく取り上げられることはありませんでした。 しかし、実は、最近の医学研究では性機能以外の面も大きな注目を浴びていて、その中でも最も注目される作用の一つが精神面への大きな影響です。テストステロンが少ないと、やる気の減退やうつ症状、筋肉痛など男性の更年期障害特有の症状としてあらわれ、心筋梗塞や脳梗塞リスクも上昇します。

さて、このテストステロンが「うつ病」の治療に有効であると発表したのは、市ヶ谷ひもろぎクリニック泌尿器科の渡部芳德先生。これまでの臨床の結果、特に軽症のうつ病ではテストステロンがよく効き、一方、重症になればなるほど抗うつ剤の方が効果があったという結果に。そのため、治療ではまず、採血をしたうえでテストステロン値をきちんと測って、その値によって2つの治療を使い分けることを重要視しているとのこと。

「うつ病と更年期障害の症状はかなりの部分が被っている可能性が高いのですが、精神科の専門外来では診断の際に男性更年期という視点でとらえないケースもまだまだ多いため、抗うつ剤を最初から使うケースが目立つことを懸念しています。"うつ"に対するアプローチが精神科の先生と泌尿器科の先生で違うという現実があります」(渡部先生)

AGA(男性型脱毛症)改善や排尿時間改善効果も!

頭皮、脱毛症は男性にとっての大きな悩み
頭皮、脱毛症は男性にとっての大きな悩み

一方、やはり男性にとって加齢とともに気になるのは頭皮。男性型脱毛症はAGAと呼ばれ(以下AGA)、「髪の毛の成長周期が短くなること」と「髪の毛が細く小さくなること」の双方によって引き起こされますが、これはテストステロンが頭皮で5αリダクターゼという酵素と結びついてジヒドロテストステロンという物質になり、その物質が毛髪の成長期を短くして毛包と呼ばれる毛を作り出す器官を小さくしてしまうことが原因です。

メンズヘルスクリニック東京の小山太郎先生によると、AGAが50歳までに発症するのは男性の約50%。その発症時期や進行速度には個人差があって遺伝的な要因も大きいのですが、一方で一卵性双生児であっても完全に同じように脱毛するわけでもないと言います。つまり、生活習慣など環境要因などもAGAの進行には複雑に影響していると考えられているとのこと。

ハーバード大学での研究では薄毛の人が虚血性心疾患を発症しやすいことがわかっており、また、肥満の人が薄毛になりやすいことも分かっていますが、その原因についてはまだ判明していないのが現状です。

治療には、外用薬としてはミノキシジル(日本の商品名:リゲイン)が有名ですが、個人によって合う合わないがあること。内服薬としてはアンドロゲン阻害剤(フィナステリドとデュタステリド)による治療が有効とされ、日本でも保険薬ではないですが承認薬ですので、医療機関で処方してもらえます。
また、マッサージ等の外的刺激によって毛が生えるかという事に対しては、医学的なしっかりとした論文はないそうです。

「現状AGA対策では決定打と言えるものはない。とにかく、いろいろ試してみて、自分に合うものを見つけるのがベストです」(小山先生)

「エイジングと排尿時間」といった面白い発表もありました。2015年のイグ・ノーベル賞受賞論文は、なんと動物の排尿時間の研究。哺乳動物の排尿時間は体の大きさに関係なくほぼ一緒の21秒プラスマイナス13秒だというのです。2本足、4本足、体の大きさは全く関係なし。ちなみにトイレに設置されている音消しの器械「おとひめ」は25秒に設定されているのだとか。

そんな排尿時間にちなんだ研究発表をしたのは、旭川医科大学病院臨床研究支援センターの松本成史先生。健常者グループ2,493人と病者グループ(高血圧や糖尿病、腎機能障害等)1227人を対象にした排尿時間の調査をしたところ、健常者に比べて病者の方が長く、また女性に比べて男性の方が長いという結果に。また年齢が高くなればなるほど排尿時間も長いこともわかったとのことです。

「男性は加齢とともにテストステロンが低下し、前立腺が肥大することによって尿道長が伸びて、膀胱の収縮力も低下します。これらの原因が相まって排尿時間が長くなると考えられ、排尿時間が21秒前後から遅くなるにつれて何らかの下部尿路の泌尿器疾患の可能性を考えた方がいいかもしれない。膀胱のアンチエイジングには血流の改善や線維化・炎症を抑えることが大事で日常の食生活を見直して全身の血流をよくすることも重要です。排尿時間は誰にでも簡単に測定出来るので、日常的に記録をつけておくこともいい」(松本先生)

そして、もう一つ。テストステロンの低下が原因になるのが肥満。福岡大学病院内分泌糖尿病内科の柳瀬敏彦先生によれば、総テストステロン値が高いとインスリン抵抗性を低くし、アディポネクチンを増やして生活習慣病(動脈硬化症、肥満等)の抑制効果が高くなります。

このように、テストステロンの研究が近年非常に進んできて、うつ病やAGA(男性型脱毛症)、さらには排尿時間にまで関係していることがわかってきています。しかし、やはりなんといっても気になるのは男性機能の衰え。そこで登場したのが順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科の辻村晃先生

レスベラトロールに男性機能改善の働き

辻村先生は赤ワインに含まれる有効成分「レスベラトロール」と男性機能の関連についての発表。レスベラトロールは、長寿遺伝子と言われるサーチュイン遺伝子(SIRT1)を活性化して、血管を守ってくれる一酸化窒素(NO)量を高める作用があり、性機能改善効果をはじめとする男性医学において様々な臨床研究がなされています。辻村先生の研究によれば、EDのラットにレスベラトロールを投与することによって陰茎海綿体圧が上昇することがわかり、テストステロン値も上昇していました。

「EDに対する治療ではバイアグラ等のPDE5阻害剤が優先的に使われて効果も高いのですが、この薬が効かない患者さんへの治療は現時点ではありません。しかし、PDE5阻害剤が効かない患者さんにレスベラトロール含有サプリメントを使用したケースでもその有用性が証明されました。また、最近ではレスベラトロールで精子運動性を高めたとの報告もあり、男性医学においてますます注目されるサプリメントになると思われます。」(辻村先生)

実は日本抗加齢医学会は、男性医療の研究についても力を入れていることが特徴。日本におけるテストステロン研究の第一人者、理事長の堀江重郎先生(順天堂大学泌尿器科教授)は、学会での議論がとても重要であると総括されました。

「テストステロンの研究はまだまだこれからです。今まさに多くの研究が進んでいる分野で、今後もいろいろな発見が期待できます。テストステロンの研究によって健康長寿社会に向けて大きな貢献が出来ればと思っています」(堀江先生)

男性のあらゆる健康面において大きな働きを持つテストステロンですが、現在テストステロン補充療法については、世界的には賛否両論あるのが現状です。これからも研究の進捗、最新の議論に注目することが必要です。(取材/文 継田治生)

医師・専門家が監修「Aging Style」

男の価値とテストステロン
座長:
堀江 重郎(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学)
大山 力(弘前大学大学院医学研究科泌尿器科学講座)

メンズヘルスと機能性食品
座長:
山田 静雄(静岡県立大学大学院薬学研究院薬食研究推進センター)
辻村 晃(順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科)

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イリノイ大で原因に迫る手がかり

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