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最高の財産とは? 人嫌いに医師が務まるのか

人は人との繋がりなしには生きていけない。
これは良し悪しの問題ではない。人はそう造られていると僕は思う。
人を造っている細胞たちも、集い寄って臓器となり、支え合って持ち主を生かしていく。
昔、僕も人嫌いを気取っていた時期があった。
クラスメートたちが集って楽しむ姿を軽蔑の眼差しで見ていた。

自分の仮面に気づいていますか?
自分の仮面に気づいていますか?

そんな医学生の時代、僕は招かれてアメリカ人女性の家で数日を過ごしたことがある。彼女の名はアン・エーデルマン。和歌山の大学で心理学を教えていた。
ちょうどその大学の学芸祭の時だった。僕は母校も含め、あまりお祭り騒ぎに馴染めなかった。
"どう、塩谷さん?"
"くだらんですな"
そうはっきり言ったわけではないが、彼女に言われた。
"塩谷さん、あなた幸せ?"
彼女は続けた。
"あなたは自分で気が付いてないけど、人に信頼され好かれるタチなのよ。こないだの2週間の泊まり込みのゼミでも、みんながあなたを議長に推したでしょ。"
そして彼女が
"あなたは寂しいのよ、認めたくないでしょうけど。"
といった時、カチッと自分の中で何かが割れた。
滂沱と涙が溢れ、しばらく泣き続けた。
割れたのは殻だった。「人嫌い」という仮面だった。
なぜその仮面をつけるようになったかはわからない。
だが、優れた精神分析医である彼女は、僕に会った時から見抜いていたようである。
そして僕は変わった。何よりも人と接するのが楽しくなった。
あるアメリカの外科の教科書に"医学者と違い医師は人嫌いであっては務まらない"と書かれているのも素直に受け止めるようになった。

男は誰でも現役時代は仕事が生きがいの大半になる。友達付き合いも仕事仲間が多い。
だが一旦現役を離れると、かつてのクラスメートとの付き合いが復活する。皆同じように引退するからだ。
だが、その仲間たちは毎年少しずつ退場していく。
だからといって、家に引きこもってはいけない。
ゴルフ仲間でも、ロータリーの会合でも、また最近はやりの異業種交流会でも、積極的に参加して新たな友達づくりを考えるべきである。友が一人増えることは、それだけ世界が広がるからだ。
僕がもしアンとの出会いがなく、人嫌いを続けていたらどうだったろう。考えるだにゾッとなる。
もうとっくに退場していたかもしれない、友達の支えなしには。
そう、最高の財産は友人である。

[執筆/編集長 塩谷信幸
 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

この記事の監修・執筆医師

塩谷 信幸
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)

北里大学名誉教授
アンチエイジング医師団代表
NPO法人 アンチエイジングネットワーク理事長
NPO法人 創傷治癒センター理事長
医療法人社団 ウィメンズヘルスクリニック東京 名誉院長

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