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8月25日:うつ病は炎症?(9月5日号 Neuron掲載論文)

最近になって、あらゆる神経疾患を炎症の枠内で考え直してみることが進んでいる。基本的には、神経の活動がアストロサイトなどグリア細胞と深くかかわっており、またマクロファージに相当する脳内のミクログリアの活性化によりこれらの関係が大きく変化すると考えると、神経伝達が変化することで症状が出る神経疾患も炎症の影響を受けるのは当然だと言えるだろう。

もちろんうつ病も例外ではない。2010年ぐらいから様々な炎症性サイトカインがうつ病で上昇しているという報告が相次いだ。さらに最近では、炎症を治療することですうつ病症状が改善するという報告も現れている。

このような状況を受けて、炎症という観点からうつ病を徹底的に眺めたてみようというのが今日紹介するマイアミ大学からの論文で9月5日号のNeuronに掲載された。タイトルは「Defective Inflammatory Pathways in Never-Treated Depressed Patients Are Associated with Poor Treatment Response (未治療のうつ病患者さんの炎症経路の異常は抗うつ治療抵抗性と関連している)」だ。

これまで言われてきた話を徹底的に調べただけの話で、ある意味で新しみはないが、うつ病患者さんの数を考えると重要だとしてNeuronも掲載したのだろう。まずこの研究では、うつ病患者さん171名(その内62名はコントロール群と条件をマッチさせている)と正常コントロール64人を選び、うつ病患者さんが治療を受ける前に27種類の血中サイトカイン濃度、末梢血の免疫に関わる血液画分を徹底的に調べて、予想通り多くの炎症性サイトカインがうつ病患者さんで高いことを示している。

実際数値をよく眺めると、特に炎症促進性サイトカインは4−5倍に濃度が高まっており、IL-12に至っては10倍を超している。また、それに対応して自然免疫の引き金をひくインフラマソームの発現が上っている。確かに大変な差だ。

その上で、うつ病の治療前後での炎症性サイトカインを調べ、治療に反応した患者さんでは炎症促進性サイトカインが低下するにもかかわらず、反応しない患者さんではほとんどのサイトカインで逆に上昇することを示している。ただこの研究では、抗うつ治療の内容を別々に扱うことはしておらず、セロトニン吸収阻害薬から認知行動療法まで同じように治療として扱っている。実際治療方法にかかわらず、治療の効果があるときは炎症促進性サイトカインが低下しており、おそらくうつ病治療により、気分が正常化することが炎症の軽減に役立っていると考えた方がよさそうだ。話としては、笑う門には福来ると言った感じで、免疫も気分に強く影響されると考えられるのだろう。

なんとなく徹底的に検査するという旧来型の臨床研究という印象を強くもった。例えば、患者さんの血清で末梢血の反応を抑える実験など、もう少しプランを練った方が良いように思う。読み終わってみると、新しい介入のヒントが出たわけではないので、拍子抜けの論文だが、元臨床医としては、ともかく徹底的に調べてなんとか診断のヒントを探すというのは、正しい方向性だと思う。

[NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ) 論文ウォッチ]

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