文字サイズ
標準
大きく

大流行の懸念大。誰もが無関心ではいられない"風疹"の問題点

風疹パンデミックの懸念が深刻化している。
9月26日に、風疹患者累積が2018年第1〜37週で642人となったことが、国立感染症研究所 感染免疫学センターより報告された。これは2008年の全数届出開始以降、大規模な流行が起こった2012〜2013年に次いで3番目に多く、2017年93人の5倍を超える報告数となる。報告によると、患者のうちの95%は成人で、男性が女性の4.2倍多く、特に30〜40代の男性(男性全体の62%)と20〜30代の女性(女性全体の57%)の報告数が多いことがわかった。

また、注目すべきなのは、報告数のうち予防接種歴のない人が24%、不明な人が69%を占めていることだと、近畿大学医学部奈良病院皮膚科教授・近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長 山田秀和氏は話す。

「風疹患者の9割近くが、予防接種を受けていれば風疹を防げたことになる。予防接種を受けていない人には、可能な限り早い接種を勧めたい。ただ、なかなかワクチン接種が浸透しない要因は、"自分はきっとかかったに違いない"という曖昧な記憶や"自分だけは大丈夫"という過信があるように感じています」

多くの人が風疹の症状を知らない

そもそも風疹は、ウイルスによって起こる急性の発疹性感染症だ。発熱した時点でウイルスは全身に回っており、後頚部のリンパ節の腫れや発疹などが現れる。小児の場合の症状はあまり重くないが、成人がかかると高熱や発疹が長引くなど重症化することがある。

特に、問題視されているのは、妊娠初期の女性が風疹にかかった場合。胎児が風疹ウイルスに感染し、難聴や心疾患、白内障、精神や身体の発達の遅れなどの先天性風疹症候群を引き起きこすことがあると、ここ数年、風疹への警告が高まってきているのだ。

「でも、多くの人が"風疹"の症状を知らないわけです。医師でも、若い世代は風疹患者と接したこともなく、単なる湿疹、じんましんなどと見間違えてしまうケースも起きています。また、患者自身も症状を知らないため、症状が出ていても、日常生活を普通に送ってしまう。それによって、感染を広めてしまうという問題もあります。まずは、どんな症状が出るのか正しく知っておくことも重要ですね。代表的な症状としては、熱があって、耳介後部リンパ節が腫れ、小さく淡紅色の発疹が顔にポツポツと現れ、首や体幹部、腕など下へ広がっていくなどの特徴が見られます。熱があってこういった、症状が少しでも現れたら、"風疹かも"という認識を持つといいでしょう。また、病院でも疑わしい場合は、風疹の検査をしてほしいと患者側から伝えてみることも必要です」(山田医師)
風疹の症状は全身に出る
風疹の症状は全身に出る

① 発熱(微熱程度の場合もあるが、高熱になることも)
② 耳の後ろから首にかけて頸部リンパ節が腫れる
③ 正面・背中の体幹部 発疹などが全体にできる
④ 腕の内側にも発疹ができることがある
⑤ 臀部や脚にも発疹が広がることがある
  ※発疹とは、赤く細かいブツブツなど。

「ただ風疹は、潜伏期間が2〜3週間あり、本人に風疹の自覚がないまま飛まつなどによって他の人にうつす、うつされることがあるのも風疹の特徴のひとつです。自分を守るため、他者への感染を防ぐためにも、もっと広めなくてはいけないのは、"予防接種の普及"だと思います」(山田医師)

曖昧な予防接種の記憶が悲劇を生む

風疹の予防接種は、1977年から女子中学生を対象とした集団予防接種に始まり、現在では1歳と小学校入学前の1年間の2回の定期接種が行われている。今20〜40代の男性は、集団予防接種の対象から外れており、予防接種を受けていない人が多い。風疹患者の報告数に20〜40代の男性が多いのはこのためだ。

「20〜40代は、子どもをもつ世代。自身のためだけでなく、妊婦に風疹をうつさないためにも予防接種は急務です。"自分は風疹やったんじゃないかな"、"予防摂取したんじゃないかな"という曖昧な記憶は、あてになりません。 万が一、自分の妊娠中の家族だけでなく、見ず知らずの妊婦にも感染させてしまう危険があるわけです。そういった危機感を持って風疹を自分ごととして考えてほしいと思うのです」(山田医師)

これは女性も同様だ。妊娠中は風疹の予防接種を受けられない。風疹ワクチン接種から免疫がつくまでに4週間程度かかってしまう。そのことも考慮して、妊娠を希望しているならば、なるべく早い時期の接種が望まれるのだ。

さらに、風疹ワクチンを確実に接種した人、確実に風疹にかかったことのある人を除き、全ての成人にワクチン接種を喚起すべきだと、山田医師は続ける。
これは、先の報告患者のうち7割近くの人が、"ワクチン接種をしたかわからない"と答えているように、実は接種していなかった、接種したが免疫がつかなかった、風疹にかかったと思っていたがよく似た他の病気だった、ということがあり得るためだ。 実際、風疹にかかった記憶のある人に血液検査を行ったところ、勘違いや風疹に似た他の病気だったという人が半数だったという調査結果が報告されていることを厚労省も発表している。

「免疫がついているかは抗体検査で確認することもできます。しかし、過去に風疹の予防接種を受けていたり、風疹にかかって免疫をもっていたとしても、予防接種を受けることによる過剰な副反応はありません。接種後に筋肉痛や疲労、頭痛などの副反応が見られることがありますが、数日から1週間程度で治ることがほとんど。風疹の予防接種への意識を変える時期に来ていると思います」(山田医師)

この記事の監修・執筆医師

注目情報

有益で確かな情報をお届けするという編集方針です。

「バリウム検査」は何のため?

2018年1月現在、49名の医師や専門家が「Aging Style」に参加しています!

おすすめ記事