文字サイズ
標準
大きく

がん患者の気持ちを変える、注目の『アピアランスケア』って何!?

医療も動き出す、がん治療と"見た目"ケア

国立がん研究センターで、抗がん剤治療中の患者に身体症状の苦痛度の調査を行ったところ、女性は上位20位のうちの6割が外見に関係する身体症状についてだったという。

山崎多賀子さん(美容ジャーナリスト)
山崎多賀子さん(美容ジャーナリスト)

女性患者の外見に関係する項目では、1位「頭髪の脱毛」、6位「まつ毛の脱毛、8位「眉毛の脱毛 などがあがった。乳がん患者に限ると、治療に伴う吐き気が嘔吐、しびれや痛みよりも、「脱毛」や「乳房の切除」に苦痛を感じることが多かったという結果になった。 また、この外見項目に関しては、女性だけでなく、男性患者でも10位「足のむくみ」、15位「顔のむくみ」、18位「頭髪の脱毛」などが20位以内に入っていた。

「今は吐き気を抑える制吐剤の効果もよくなっているので、抗がん剤治療中でもふつうに生活や仕事をしている人が多くなりました。治療をしながら社会生活を送るからこそ、外見の変化はより大きな悩みになっていくのです」と山崎さんは言う。

そして、2013年に国立がん研究センター中央病院にアピアランス支援センターが立ち上がった。

「センター長の野澤桂子先生は以前から、がん患者の悩みとして増加している外見を支援することにより、前向きに生きられるのではないか、と話していました。今、がん領域の治療現場ではアピアランスケアという言葉とともに注目が高まっています。がん患者に外見の支援を行うことで前向きに治療、生活が送れるという研究も進められています。それは、キレイにするという美容の支援だけではなくもっと幅広い、外見で悩んでいる人に対して"その人が戻りたい場所へ戻す支援"です」

女性だけでなく、男性にも必要なアピアランスケア

海外では脱毛中の患者に美容サポートを行う世界的な組織が存在するが、日本ではそういった組織はまだないという。山崎さんは個人的に病院や患者会、がん関係のイベントをベースに活動し、外見に悩む患者へのヘアメイクやアドバイスを行なっている。このほか化粧品メーカー、広告代理店、NPOが協力して、プロのヘアメイクできれいになった患者さんをカメラマンが撮影するイベントが開催されるなど、外見ケアの活動は少しずつ広がっているという。

「最近は男性患者さんからの相談も増えています。男性のメイクは肌のくすみをカバーして、眉を自然に描きリップクリームを塗るくらいなので5分程度で終わります。少し手を加えるだけなのに、本当にいきいきとした印象に変わるので喜んでいただけます。"久し振りに笑ったよ"とおっしゃった方もいました。実は、男性のがん患者さんの7割の方が、外見の変化によって"仕事の信用をなくす"のではと恐怖を感じていることがわかりました。女性だけでなく、男性の患者さんもアピアランスの情報を欲しがっていたのです」

13年前、山崎さんは治療を始める前にウィッグを購入した。病気の不安、治療の不安を抱えながら、ちょっと高価だったけれど、似合うと思ったウィッグを、思い切って。そのウィッグをつけたとき「私はこれで大丈夫だ!」と思えたという。

「副作用を隠すためなら何でもいい、脱毛した頭を隠せればどんなウィッグでもいい、というわけではないんですね。隠すというネガティブな感覚ではなく、自分に似合うものを選んで、おしゃれをする。そこから、出かけようとか人に会おう、という前向きな気持ちが生まれます。何があっても人生、楽しいこととか自分のしたいことをあきらめることはないんです。そのために外見のケア、アピアランスケアの支援がもっともっと広がってほしいと願っています」

取材/文 海野由利子

医師・専門家が監修「Aging Style」

注目情報

有益で確かな情報をお届けするという編集方針です。

「バリウム検査」は何のため?

2018年1月現在、49名の医師や専門家が「Aging Style」に参加しています!

おすすめ記事