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美容医療で一番人気の「注入治療」で今絶対知っておくべきこと

第41回日本美容外科学会総会(JSAPS)、第133回学術集会が10月25日・26日にTKPガーデンシティ品川に於いて開催され、約40の講座や講演などが行われた。その中でもここ数年、飛躍的に患者数が最も伸びている治療「フィラー」の教育講演(司会:山下理絵医師、演者:神田美容外科形成外科医院院長 征矢野進一医師、いわきクリニック形成外科・皮膚科 岩城佳津美医師)は注目が集まった。フィラーのメリットと今後の課題について、取材をした。

フィラー(注入治療)のメリットと問題点

第41回日本美容外科学会総会
第41回日本美容外科学会総会

フィラーとは直訳すると"埋めるもの・詰めもの"などの意味で、美容医療においては注入剤や注入医療のことを指す。いわゆる一般的には"プチ整形"と呼ばれるもののひとつで、切らずに注入剤を注射するだけでシワやたるみなど老け顔の悩みを解消できると人気が高い。患者には男性も多いという。

フィラーの治療メリットは、術中・術後の痛みや腫れが軽度であること、治療痕も目立ちにくいなどの手軽さ・気軽さが挙げられる。この手軽さ・気軽さは、これまで特別なものと思われていた美容医療へのハードルを下げ、美容医療は外見の悩みを解消する手段の選択肢のひとつとして多くの人に認知されるようになった。

だが、この手軽さ・気軽さが「施術が安易だから安心・安全」という誤った認識を与えてしまい、トラブルも多く発生している。実際、いわきクリニック形成外科・皮膚科には、他のクリニックからの医師から、また他のクリニックで治療した患者から過去3年の間に合わせて24件の塞栓事故(編集部注1)に関するアフターフォローの相談があったという。

※編集部注1:塞栓とは、注入時に針で血管を傷つけることで注入剤が血管に入り、血管を塞ぐことで発生。失明に至る例もある。合併症のリスクが高い血管を知り、注入時に避けて注入することが必要とされている。

こういった報告の現状を踏まえ、今回の学会の講演では症例に基づくフィラー治療の技法や効果のほか、顔面の解剖学に基づいた治療の必要性や、塞栓事故の回避についても解説された。

手軽で身近なものだからこそ、リスクを知ることも大事

顔面のフィラーに用いられる注入剤は、コラーゲンやヒアルロン酸が主流だ。コラーゲンやヒアルロン酸は多くの化粧品に配合されており、肌によいものというイメージを持つ人が多い。そのため、これらを注入することによるアレルギーなどの副作用を想像する人は少ない。

だが、化粧品と注入治療で用いるコラーゲンやヒアルロン酸とでは種類や成分、濃度が異なり、皮膚の外から浸透させるのと皮下組織に注入するのとでは体内における作用も変わってくる。コラーゲンやヒアルロン酸配合の化粧品で肌トラブルが生じない人でも、注入治療においてトラブルが生じないとは限らないのだ。

神田美容外科形成外科医院では、コラーゲン注入治療を行う前にはアレルギー反応を避けるための皮内テストを行うが、牛由来コラーゲンやブタ由来コラーゲンでは3%程度が治療後に腫れやアレルギーが生じる、また数%程度の人が麻酔クリームによるアレルギー反応が起きると征矢野進一医師は話す。

「コラーゲンは、一度注入すると薬で溶かすことできない。また、皮内テストの後にアレルギー陽性反応を起こすこともあるので、とくに最初の治療は慎重に行うべきです」(征矢野進一医師)

また、注入剤の選択だけでなく、濃度や量、さらには注入に用いる針のサイズ(細さ)も大事で、その選択をする医師の技量も重要だと、征矢野進一医師は続ける。

「コラーゲンの注入治療は、顔の広い範囲に用いることができ、とくに細かいシワや微妙な修正に効果的です。その効果を最大限に引き出すためにも、部位や状態に応じた適切な注入材料を用い、適切な量や針を選択することが重要です」(征矢野進一医師)

フィラーの治療には、解剖学に基づいたスキルが必要

フィラー治療では、アレルギーなどの副作用のほか、仕上りに対して満足できなかったというトラブルも多く発生しているという。特定のシワの溝を埋めたことで別のシワや皮膚のくぼみが目立ってしまったケースや、注入量が多すぎて不自然な膨らみが目立つようになってしまったケースなどがこれにあたる。

このようなトラブルを防ぎ、美しく自然な施術結果を得るためには、医師・患者ともに、顔がどのように老けるのかを理解し、さらに、顔全体のバランスが整った自然な美しさを保つ治療が大事であることを理解すべきだと岩城佳津美医師は話す。

「顔面の加齢変化は、皮膚や筋肉、骨の変化が同時多発的に相互作用を及ぼしながら進行します。また、たとえば目などの局所の変化は、周辺組織にも影響を及ぼします。これらが複雑に絡み合い、輪郭は逆卵型から四角へと変化します。つまり、顔面の加齢変化とは輪郭の変化といえるでしょう」(岩城佳津美医師)

これは、たとえばマリオネットライン(口角から下に向かう直線的なシワ)が気になるからといって、ほうれい線にフィラー注入し、シワを埋めるだけでは自然な美しさは得られないということ。シワができたプロセスを遡って、影響する筋肉や靭帯などにもアプローチすることが必要であり、シワを埋めるのと同時に、たるんだ組織を引き上げたり、ボリュームを回復する治療を行い、輪郭を修正しなければならない。

このことを理解しないで、老けて見えるのはほうれい線のせいだと安易にシワを埋める治療だけを行うと、シワは埋まったけれど、目もとのくぼみやこけた頬が目立つようになったなど、不自然で満足感の得られない治療結果を招くことに。イメージするゴールに、解剖学の見地に基づいて導くことで、はじめてバランスの整った美しさと満足感を得ることができるのだ。

さらに、この解剖学への医師の理解不足が、重大な塞栓事故へつながることもあると岩城佳津美医師は指摘する。

「2014年に数種のヒアルロン酸製剤が厚生労働省の製造販売承認を取得したことで、注入治療に参入する医師が急増し、それに伴って塞栓事故も増加しました。危篤な塞栓事故を回避するためにも、医師は顔面の解剖学を熟知し、正しい注入法を身につけることが重要です」(岩城佳津美医師)

フィラー治療に今後期待されることとは!?

フィラーは、加齢による外見の悩みをダウンタイムなく手軽に解消できる魅力的な治療法だ。高齢化が進む中、健康で美しく長生きしたいという思考が高まり、これからも需要が増えることが予想される。だが、フィラーのメリットだけが一人歩きし、注入剤が身近な物質であることもあって、そのリスクについては見落とされがちだ。

また、ほうれい線や目の下のたるみなど、年齢による顔面変化の悩みはパーツごとに捉えやすい。だからこそ、医師には安全かつ解剖学に基づいたバランスのいい顔面を意識した医療の提供は必須になっていくだろう。今回の学会では、単なる最新医術提案だけでなく、解剖学やバランス感といった部分がいつも以上に強調されていた。また、医療側だけでなく、受ける側の患者サイドも簡単だから、話題だからと選択するのではなく、正しい知識を理解して受けることが必要といえるだろう。医師のより一層のスキルアップと患者の認識が高まることで、手軽かつ安全で、満足度の高いフィラー治療が浸透することを期待したい。(取材/文 田中優子)

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