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九州が熱い!日本抗加齢医学会「九州地方会」第1回学術総会開催

3月17日、一般社団法人日本抗加齢医学会の分科会の一つ、九州地方会の学術総会が福岡市内で開催された。

学術総会/市民公開講座
学術総会/市民公開講座

2001年に設立された日本抗加齢研究会を前身とする日本抗加齢医学会は、アンチエイジング(抗加齢)医学・医療における学会として約8,500名の会員を擁する(2018年10月現在)。同医学会には眼科、歯科、婦人科、見た目、運動器、脳心血管などさまざまな分野の専門分科会があるが、九州地方会は初となる地域単位の分科会。当日は同地方会が主催する第1回学術総会のほか、その姉妹団体で広く一般や企業向けにアンチエイジングの普及・啓発を行う「日本抗加齢協会」九州支部が主催する市民公開講座も併催された。初回にもかかわらず、学術総会には298名、市民公開講座に311名という、主催者予想を大幅に上回る会員及び市民が参加し大いに盛り上がった。

学術講演プログラムは、見た目、栄養・運動、内科の3領域

学術総会は大慈弥裕之会長(福岡大学医学部形成外科主任教授)と尾池雄一事務局長(熊本大学大学院生命科学研究部分子遺伝学分野教授)による開会の挨拶でスタート。

大慈弥裕之会長と尾池雄一事務局長による開会式
大慈弥裕之会長と尾池雄一事務局長による開会式

まず、見た目のアンチエイジング領域では「容貌の加齢変化に対する医学的アプローチ」という括りで福岡大学博多駅クリニック形成外科・美容外科の衛藤明子氏が、しみ、しわ、たるみの外科的治療と非外科的治療の最新状況について、皮膚、皮下組織、骨それぞれの加齢変化や解剖学的な特徴・注意点に言及しつつ有効性と安全性の両面から講演した。続いて九州地方会の代表も務める大慈弥裕之会長は、加齢による眼瞼(まぶた)周囲の見た目の変化や生活の質への影響について、西洋人と東洋人の比較や高齢者と若年者の比較を織り交ぜて講演。まぶたの皮膚のたるみ(上眼瞼皮膚弛緩症)やまぶたを持ち上げる部位の機能低下(腱膜性下垂症)の治療が結果的に視野や肩こりの改善だけでなく見た目の改善にも繋がるという具体的な事例も紹介された。

次に、栄養・運動領域では「フレイル・サルコペニア予防のための栄養と運動」というテーマで中村学園大学栄養科学部教授の河手久弥氏が登壇。骨格筋の機能を解説した上で、筋肉量減少や筋力低下(サルコペニア)が身体活動量の低下に繋がり、それが消費エネルギー量の低下、さらには食欲低下と食事摂取量の低下に繋がり低栄養状態に至るという悪循環について解説した。また、要介護状態に至るリスクがある虚弱状態(フレイル)については統一基準が無いとした上で、身体的な脆弱性だけでなく精神的または社会的にも問題を伴うことがある一方、適切な介入・治療により回復・改善の可能性もあるとして具体例を紹介した。続いて福岡大学スポーツ科学部教授の檜垣靖樹氏が登壇。故・田中宏暁同大教授が誰でも気軽に行うことが可能な運動として提唱した「スロージョギング」がフレイルやサルコペニアの予防にも繋がるとしとして、その具体的な解説とデモンストレーションを行った。

最後に、内科領域では「男性更年期を極める~基礎から実地医療まで~」というテーマで、福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科教授の柳瀬敏彦氏は男性のアンチエイジングにおける重要な男性ホルモンであるテストステロンについて、動脈硬化や肥満などの生活習慣病の抑制効果のほか、性機能や筋力の維持の観点から、テストステロンの指標や意義・可能性について相関データを用いて解説。また、LOH症候群(加齢性腺機能低下症)と呼ばれる加齢に伴うテストステロン低下による臓器機能低下を診療する際に使用される問診票(AMSスコア)の問題点と改善策についても述べた。続いて中島こうやクリニック院長の中島孝哉氏は、男性更年期関連疾患に対する実地医療の実践例として、テストステロン筋肉注射(エナルモンデポー)、唾液テストステロン検査、テストステロン軟膏塗布に関する診療現場の事例を同院の男性更年期外来の統計データを交えて紹介した。

特別講演テーマは「変貌する日本の健康医療戦略:抗加齢医学の役割」

多くの参加者の熱気に包まれた会場
多くの参加者の熱気に包まれた会場

また、学術総会の締め括りとして行われた特別講演には同医学会副理事長で大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授の森下竜一氏が登壇。内閣府規制改革推進会議委員も務める森下氏は、「変貌する日本の健康医療戦略:抗加齢医学の役割」と題し、日本人の平均寿命の延伸に伴う「老後」の長期化や、それに付随する財政問題(皆保険制度問題)や医療需要の変化について解説。また、健康長寿社会の実現が政府の経済成長戦略の要になっており、健康医療戦略法(推進法第2条)においても健康長寿産業の創出・活性化が経済成長に貢献することが謳われている点を強調。再生医療等製品の早期実用化に対応した承認制度変更やオンライン診療の普及拡大などの事例のほか、2025年に予定される大阪万博に向けた取り組みなどを紹介した。

九州のアンチエイジング動向には要注目

学術総会終了後に開催された日本抗加齢協会九州支部主催の第1回市民公開講座では、日本笑い学会理事で福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授の大平哲也氏が「笑いと健康」をテーマに講演。生活習慣病やうつ・認知症予防など「笑い」の効能を紹介したほか、来場者を巻き込み「笑いヨガ」の実践方法を伝授。会場は大きな笑いに包まれた。

当日は学術総会、市民公開講座ともに参加者がメイン会場に収まりきらずサブ会場でビデオ中継する盛況ぶり。学術総会は医師・医療従事者を主な対象としているため、地域単位の活発な学会活動はその地域で医療サービスを受ける側の安心感にも繋がる。来年の第2回学術総会では今回事務局長を務めた尾池氏が会長となり大幅にスケールアップして開催することが既に決まっているとのこと。九州のアンチエイジング動向には今後も要注目だ。

医師・専門家が監修「Aging Style」

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