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美容医療のリスクマネジメントとダメージコントロール

数日前、自民党議員のパーティーで「復興以上に大事なのは高橋さん」発言をして2時間後には辞任に追い込まれた桜田元五輪相。これまでの数々の失言を考えれば辞任は当然だが、安倍首相の任命責任を巡る毎度お決まりの与野党攻防や、度が過ぎるとも思える言葉狩りや被災地を巻き込んだ報道など、後味が悪く違和感の残るニュースだった。

あれだけ失言を重ねても安倍首相は桜田大臣を擁護し続けていた。遅きに失した感のある急転直下の更迭劇ではこれまで蓄積したダメージと今後のリスクの両方を安倍首相なりのバランス感覚で判断したのだろう。

政治に限らずどの世界でも、損害が発生する危険性を最小限に留めるためのリスクマネジメントと、不幸にも発生してしまった損害を最小限に留め修復を図るためのダメージコントロールは組織や個人の日々の営みの中でさまざまな形で行われるものだ。時にはダメージコントロールと並行してさらなる危険に備えたリスクマネジメントが必要な場合もある。

危険を察知!
危険を察知!

僕が専門とする美容医療の場合、他分野の医療と違い医学的な必要性や緊急性が低い、あるいは無い場合が多い。さらに、患者と医師それぞれの美的感覚に基づき、患者は医師に自身の悩みや希望を伝え、医師はそれをできるだけ理解した上で解決策を提示したりそれを手術・施術として実施する。そこには患者と医師の意思疎通がうまく行かないリスクもあれば、十分な意思疎通ができても手術・施術の結果が事前に想定した美的レベルに達しないリスクや、その結果に対する認識や評価に関して患者・医師間で大きなギャップが生じてしまうリスクもある。

患者の側、医師の側それぞれにさまざまなリスクがつきものだが、最大のリスクは、当初は無いか低かったはずの「(手術・施術の)医学的な必要性」が合併症や後遺症により急激に高まってしまうような状況だ。

たとえるなら、不用意で雑な道路工事をおこなって地中のガス管や水道管を破裂させてしまうようなことと似たリスクが美容医療には常に潜んでいると言っても過言ではない。さらに言うなら、工事の時はガス管や水道管を破裂させるところまでは至らずとも何かしらの損傷を与えたり劣化が早まる問題を地中に残してしまい、それが5年後、10年後の管の破裂に繋がるようなこともあり得る。

患者の側でできるリスクマネジメントは、検討段階で施術の種類・料金だけでなく合併症・後遺症や失敗例などのリスクについてよく調べることに尽きる。最近はそのようなリスク説明をホームページに詳しく掲載している医療機関も多い。その上で、受診を希望する医療機関の有料カウンセリングなどで医師に説明を求め理解を深めることが重要。納得できる説明を受けられない場合は他の医療でセカンドオピニオン的に同様のカウンセリングを受けるというのも立派なリスクマネジメントだ。

不幸にもダメージコントロールが必要な事態になった場合でも、それまでどれだけリスクマネジメントを行ってきたかによって以後のダメージコントロールの難易度や成否が左右されることが多い。実は医師にとっても、自身が最善と判断する施術や他の選択肢それぞれの効果とリスクを、患者が十分に理解し納得できるよう丁寧な事前説明をすることが何よりも基本的なリスクマネジメントになる。美容医療の現場には患者にとっても医師にとっても「ハイリスク・ハイリターン」はないのだから。

[執筆/編集長 塩谷信幸 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

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