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「整形シンデレラ オーディション」時代 令和のシンデレラたちへ

先週末と今週末の2回にわたり、大手美容クリニックが主催する「整形シンデレラ オーディション」の舞台裏ドキュメンタリー番組がテレビで放映された。

全国の応募者を書類審査と面接、さらには合宿審査で絞り込んだ上で最終発表イベントを行うという、今年で4年目を迎えた企画でグランプリ受賞者の優勝賞金は300万円。優勝者を含むファイナリストたちは手術費用をクリニック側に負担して貰うことができ、大手ファッションショーにも出演するという。

応募できるのは16歳から30歳までの女性だが、歴代ファイナリストを一覧するとやはり20歳前後の女性が多い。手術前後のいわゆるビフォー・アフター写真と映像や手術に至った動機などの情報が満載されたイベント公式ホームページを眺めると、美容医療に対する日本人の感覚や価値観が特に若い人の間では劇的に変わったことを実感するのとともに、成長過程で大きなコンプレックスを抱えて美容外科手術にたどり着くという、昔から変わることのない「美容医療と心の問題」を改めて痛感した。

整形シンデレラの苦悩
整形シンデレラの苦悩

令和を迎えた今となってはふた時代前、昭和の話になるが、僕がかつて現役の形成外科医として日々執刀していた当時、特に美容外科手術の若い患者に対しては初診段階から入念なコミュニケーションを取ることを心がけていた。その上で、「別案」を再認識して貰う意味で化粧やエステの専門家によるカウンセリングや指導も行っていた。こと美容医療に関しては、人生100年時代を迎えた現在の20代は昔の20代以上にこのような事前のケアが必要ではないだろうか。

もう50年ほど前の話になるが、アメリカの名門医大ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームがフェイスリフト、いわゆるしわ伸ばし手術を受ける患者が美容外科手術を希望する患者の中でも一番精神的に安定しているという報告を行ったことがある。

そもそも目や鼻や口など生まれつきの顔の造作を変えるのと違い、しわ伸ばしの場合は加齢がある程度進むことで患者がしわを意識し手術を考えるようになることが多い。ジョンズ・ホプキンス大の報告でも、多数を占める40歳以上のフェイスリフト患者は仕事上の理由で外見を若く見せる必要を感じたなど、手術の動機や効果・限界を合理的に判断した上で自己責任で手術に踏み切るケースが多かった。その一方、少数ながら若くしてフェイスリフトを希望する患者に多かったのが、成長過程で家族や周囲の他人との関係において抱えてきた心理的な問題の帰結先がフェイスリフト手術というケース。

50年も前にこのような社会学や心理学的なアプローチでアメリカを代表する医大が美容外科の患者の問題に取り組んでいたことには今なお感心する。日本の場合、外科の中でも形成外科は異端視され、形成外科が標榜科として認められることになった当時、形成外科には美容を含まないとされた残念な歴史がある。標榜科として認められていなかった美容外科は大学病院をはじめとする総合病院ではほとんど扱われず、基本的に「美容整形」の看板を掲げる開業医が扱う領域という時代が長く続いた。あの当時から大学病院が美容外科を本格的に扱っていたら、患者の心理面でのケアや美容医療業界に関する社会的なケアなどにより今以上に健全な業界に成長していただろう。

幸い冒頭のオーディションでファイナリストになった女性たちはクリニックの実質的な広告塔としてメディアに登場しているため、手術自体はもちろん術前・術後のケアも手厚く念入りに行われたことは想像に難くない。だが、これを見て同じような夢を見る人たちが自己負担でクリニック選びや施術選びをする場合、果たして同じようなケアが待っているのだろうか。

老兵は死なず、ただ消え去ることもせず、警鐘を鳴らし続けたい。

[執筆/編集長 塩谷信幸 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

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