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健康寿命の「補完的指標」とは...

近年、何かと話題にのぼることの多い「健康寿命」。少子高齢化と平均寿命延伸が進む中、社会保障制度面の課題が浮き彫りになったこともあり、いわゆる「健康長寿」において長寿であること以上に健康であることの重要性が認識されるようになったことがその理由の一つだ。

厚生労働省はこの3月、その健康寿命を2040年までに男女とも3年以上延伸させて75歳以上を目標とすることを公表した。これはこの分野の専門家などから成る「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」の提言を受けて決定した目標で、その中には健康寿命の「補完的指標」として要介護2に至る前の期間(日常生活動作が自立している期間)を用いることも含まれている。

健康寿命の「補完的指標」
健康寿命の「補完的指標」

健康寿命は3年ごとに実施される国民生活基礎調査の結果から算出されるため毎年更新されるものではない。直近の2016年(平成28年)の健康寿命データでは男性が72.14年、女性は74.79年。健康寿命と平均寿命の差、すなわち「健康ではない期間」はそれぞれ8.84年と12.35年だ。補完的指標である「日常生活動作が自立している期間」を仮にそのまま健康寿命として置き換えた場合、同じ2016年時点で男性が79.47年、女性は83.84年となる。健康ではない期間が長くなれば医療・介護費用も増える。その期間を短くすることは費用軽減だけでなくQOL(Quality of Life、生活の質/人生の質)の維持・低下軽減にも繋がる。うがった見方をすると、意欲的な延伸目標達成に向けた補完的な予備策と考えることもできる。

現行の健康寿命は「健康上の問題で日常生活を制限されることなく生活できる期間」とされている。国民生活基礎調査の健康票における「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問に対する回答(『ある/ない』)を主指標とし、「あなたの現在の健康状態はいかがですか」という質問に対する回答(『よい/まあよい/ふつう/あまりよくない/よくない』)を副指標として算出される。現行の健康寿命を算出する根拠となる情報が自己申告方式であるのに対して、補完的指標である「日常生活動作が自立している期間」の場合、介護保険の認定における要介護1以下なのか要介護2以上なのかで健康・不健康の線引きをしているため、現行の健康寿命の算出方法に比べると客観性が高いとされている。

健康寿命はもともと世界保健機関(WHO)が2000年に提唱した概念。そのWHOはWHO憲章で「健康」を以下の通り定義している。これを踏まえると健康寿命の算出指標に関する主観性・客観性は国によっても相当なばらつきがあることが予想される。その国独自の基準であったとしても指標の客観性が高まることは国民にとって有益なことだろう。

"Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity."
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいう。」(日本WHO協会訳)

「報告書の概要」(厚生労働省)
(平成31年3月28日付「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」報告書より抜粋)

□ 現行使用している「日常生活に制限のない期間の平均」は健康の3要素(身体・精神・社会)を包括的に内包している指標であることから、今後も健康寿命として取り扱う
 ●健康寿命は今後も3年に一度の算出となるため、毎年・地域毎の算定には補完指標を利活用する
 ●欧米先進国でも類似の質問により健康寿命を算出しており、現行指標が国際的に特殊とは言えない
□ 補完指標として、要介護2以上を「不健康」と定義した「日常生活動作が自立している期間の平均」を利活用することで、毎年・地域毎の算定を行うことが可能となるが、下記の理由で主指標たり得ない
 ●介護データは主に身体的要素(一部、精神的・社会的要素も含む)を反映するため
 ●介護制度の制度上、主に65歳以上のみが対象となるため
□ 上の2指標の取り扱いについて、混乱を生じないように、本研究会報告書の中で、見方・使い方をまとめた上で、Q&A集を付記して、読者が理解しやすいように配慮を行った
□ 健康寿命に影響を及ぼす要因(身体的:栄養・運動など、精神的:認知症など、社会的:社会参加・就業など)の分析のため、平成31年度以降の研究班で検討を行う
□ 延伸目標については、有識者による健康寿命の将来推計等を参考にし、「2016年から2040年までに3年以上延伸する」とし、これにより男女ともに健康寿命は75年以上となる。

医師・専門家が監修「Aging Style」

【参考】

厚生労働省:「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」の報告書及び「健康寿命の延伸の効果に係る研究班」の議論の整理(平成31年3月28日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04074.html

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