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自然と不自然の境目「偽原始人」的アンチエイジングで行こう!

関東もようやく梅雨明けとなり連日猛暑が続いている。
気象庁によると「猛暑日」は最高気温が35度以上の日で、30度以上35度未満の日は「真夏日」だそうだ。東京ではこの数日、最高気温が35度を超えたので名実ともに猛暑日。僕の住む横浜では最高気温が35度にわずかながら及ばず、今年はまだ猛暑日が無いらしい。

とはいえ、猛暑は猛暑。仕事や気分転換で毎日外出する87歳の老体には堪える毎日だ。

自然と不自然の境目

最近はあまり目にすることがなくなったが、「里山」という言葉がある。人里離れた山奥にあるような山ではなく、人の住む集落から比較的近い所にあり、農業や林業など何かしら人の営みの影響を受けている山。そんな里山は、一般的な意味での自然は豊富であっても、自然とは言えないことが行われる中で人間と共存・共生していると考えることもできる。

長年アンチエイジングに関わっていると、自然なことと不自然なこと、あるいは人工的なこととの境目がどこにあるのかと自問することが時折ある。そのような問いはやはり僕が専門とする美容外科、いわゆる美容整形や「見た目のアンチエイジング」といった分野に関連することが多いが、それ以外の分野でもある。

たとえば食事、あるいは先週のコラムでも触れた運動。食事や運動の種類や形態、基準や程度に関して、何をどの程度実践することがアンチエイジングの観点から自然なのだろうか。もちろん、絶対的で唯一の正解というものは存在せず、人それぞれの体質や年齢、体調・体力に応じた食事や運動のバリエーションやそれらの組み合わせがその時どきに有効な正解として存在するはず。だが、どこに自然と不自然、あるいは「無理」と「無理ない」のラインが存在するのかは謎だ。

「里山」的アンチエイジング

アンチエイジングと直結する例ではないが、ボディビルのような、見た目が大前提で自然とは言えない目標や基準が一般的にも認知されている場合は分かりやすい。だが、アンチエイジングに絡めた「フィットネス」や「ダイエット」の場合はどうだろう。かつて「健康のために1日1万歩」が常識だった時代があったが、歩き過ぎは膝や足の関節症などの問題の原因にもなるというマイナス面を軽視するわけにもいかなくなり、今では年齢や健康状態に応じて「無理ない」範囲でとトーンダウンしている。体形の維持や改善が絡むようなダイエットと栄養バランスの場合も然り。

当然といえば当然のことだが、たとえ目安程度のものであっても基準などが数値化され、それが絶対的な常識であるかのように一人歩きを始めると逆効果を招くことがある。また、数値化されていないことでも、多種多様な「健康観」や「見た目の基準」が混在する中、一般的・客観的には不自然なことが当事者の主観では自然なこととして定着・普及することも多い。

では不自然なことは一切排除して自然に徹すれば良いかというと、それはまた違う。アンチエイジングに限らず、健康であることを目標にせず自然体のまま生きるとすれば、究極的には原始人のような健康状態や見た目、そして寿命になるだろう。仮に個人レベルではそれも良しと考えたとしても、現代社会で個人が本来の自然に徹することは不可能だ。里山と同様アンチエイジングも、社会という人の営みの影響を適度に受け、多少の不自然さや人工的なものも受け入れつつ、豊富な自然を残すことに努めるのが良いのではないだろうか。

「偽原始人」的アンチエイジング

アンチエイジング偽原始人
アンチエイジング偽原始人

かく言う僕はというと、70代になりアンチエイジング医学に積極的に関わるようになるまでは健康的な生活にあまり興味が無かった。見た目に関しては今も昔も無頓着。毎朝の髭剃りと毎月の散髪は欠かさないが、洗顔も含めスキンケアとは今もあまり縁がない。ただ不精なだけで特に主義主張があるわけでもない。自分では極めて自然体だと思っているが、髭剃りや散髪を欠かさないあたりは中途半端な自然体、故・井上ひさし氏の名著のタイトルにもある「偽原始人」の一種かもしれない。

僕は生まれも育ちも東京、下北沢駅にほど近い世田谷の代田。当時は田舎町だったので自然はそれなりに豊富だったが、里山とともに育ったと言えるような土地柄でもなかった。だが、74年前、1945年の夏は父の生家のある宮城県の白石で過ごした。蔵王連峰のふもとにあり、里山らしい里山にも囲まれた場所だった。その土地で迎えた「あの日」の話はまた次回にでも譲ることにしよう。

[執筆/編集長 塩谷信幸 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

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