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消費税率引き上げと老化、共通点は「ゆでガエル」?

今週、消費税が8%から10%に引き上げられた。

数年前から逃げ水のように先送りされてきた10%への引き上げ。延期を繰り返したことで意識には強めに刷り込まれたが、ちょうど30年前に消費税が初めて導入されたときのようなインパクトを感じるわけでもない。税率が小刻みに引き上げられてきたことで「ゆでガエル」状態に陥っているのだろうか。

そもそも消費税率引き上げの最大の理由は超高齢社会における社会保障の財源確保。健康長寿やアンチエイジングとも無関係な話ではない。

そんなことを考えていたら、加齢や老化というのも一種の「ゆでガエル」かもしれないと気がついた。

ゆでガエル
ゆでガエル

老化という鍋の中のカエル

水を張った鍋にカエルを入れて徐々に温めていくと、その水が熱くなっても気がつかず死んでしまうというのが「ゆでガエル」。欧米では多くの学者たちが真面目な議論や実験を重ねたとされるこの学説の真偽のほどはさておき、加齢や老化は徐々に進行する。それも体の各パーツの老化が足並みを揃えて進行するわけでもないのでたちが悪い。さらには個々の老化現象に対する自覚や感度も絡むため、ふと気がつくと浜辺の波のように次から次へと押し寄せている。

僕はまだ40代だったある日、鏡に映る自分の髪の中に数本の白髪を見つけて愕然となったことがある。少しずつ伸びていた白髪に気がつかなかっただけの話だが、もともと外見にあまり興味が無かったはずの自分が数本の白髪で愕然となったことで二重の驚きがあった。外科医としては脂の乗った時期だったからこそのショックということもあったかもしれない。

その後、年齢を重ねるにつれ、老眼や顔のシワなど、ある日突然に発症したり進行するはずもない老化現象に「ある日突然気がつく」ということが増えるようになった。記憶力や咄嗟の動作などの場合は同条件下で再現されることが少ないためか、「ある日突然気がつく」ことはさほど多くない。仮に気がついたとしても、たまたまその時は何かの拍子で物忘れをしたり鈍い反応になったのだと自分に言い聞かせることもできるが、見た目の老化の場合はそうもいかない。

とはいえ、皮膚や容貌・体形など見た目に関わる部分に限らず、臓器や血液など体のありとあらゆる部位がそれぞれ勝手なペースで老化していく。それに気がつくような動作や機会が少ないと、ある日突然気づかされて愕然とすることになる。今や100年時代といわれる人生の後半はこれの連続かもしれない。

ところで、政府が「人生100年時代」というキャッチフレーズを使うようになったのは2年前。それまでは人生何年時代だったかご記憶にあるだろうか。

人生「○○年」時代?

2年前に「人生100年時代」が登場するまで使われていたのは「人生90年時代」。ある日を境に一気に10年も人生が長くなってしまった。

その10年前、舛添要一氏が厚労大臣だった当時は「人生85年時代」。そのさらに数年前、僕が本格的にアンチエイジング医学に取り組むようになった当時は人生80年時代だった。政府は人生の長さを勝手に、平均寿命延伸よりも遥かに早いペースで延伸させているようにも見える。

「人生80年時代」と言われていた当時は、もうその時代が到来したという意味で使われていたと記憶しているが、その後の「人生○○年時代」ではそれがいつ到来するのかという点が曖昧だ。人生100年時代キャンペーンのきっかけとなった「2007年に日本で生まれた子供は107歳まで生きる確率が50%」という研究結果を聞いても、なんだ100年先の話かと拍子抜けするような楽観主義者の僕が気にしても仕方ないことかもしれないが。

到来のタイミングはいずれにしても、政府は「人生100年時代」というキャッチフレーズをうまく使っている。最大の目的である社会保障制度や労働市場の改革という危機回避策を阻むような「不健康長寿化」が進行しないよう、巧みに国民の健康意識向上や健康的な生活の実践のための舵取りを図っている...と書くと批判的に聞こえるかもしれないが、実はこれは悪いことではないと考えている。

既に「ゆでガエル」と言われて久しい経済や社会保障制度という大きな鍋の中にいる国民それぞれが、自分自身の健康や老化に関する小鍋の中に入っているという二重構造を思い浮かべてほしい。人生100年時代キャンペーンは、「老化や不健康に関してゆでガエルにならないように」という、政府から国民に対するありがたい警鐘だと前向きに受け止めることができるのではないだろうか。

[執筆/編集長 塩谷信幸 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

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