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風邪には効かない抗菌薬(抗生物質)。正しい理解を。

肺炎などの感染症治療に欠かすことのできない抗菌薬(抗生物質)。だが、ウイルスが原因の風邪には効果がないことをご存知だろうか。

風邪には効果がないにもかかわらず、「念のため」の服用など不適切な使い方をすると、抗菌薬が効きにくい「薬剤耐性菌」を生み出すリスクが高くなる。これが近年、世界的に大きな社会問題となっている。

2013年の推計では、薬剤耐性による全世界の死亡者数は年間70万人。何の対策も講じなければ、約30年後には1,000万人が死亡するという予測もある。

細菌とはひとつの細胞からなる単細胞生物。病気の原因になる細菌としては大腸菌、黄色ブドウ球菌、結核菌などが知られており、抗菌薬はこうした細菌の活動を抑えたり壊したりする薬だ。細菌は微生物として、薬からなんとか生き延びようと学習し変化する。このような薬が効かなくなる性質を「薬剤耐性(Antimicrobial Resistance/AMR)」といい、抗菌薬が効かない、もしくは効きにくくなった細菌のことを「薬剤耐性菌」という。

「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」ポスター
「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」ポスター

抗菌薬が頻繁に使用されると、抗菌薬の効く菌はいなくなりAMRをもった細菌が生き残る。これにより、感染症の治療が難しくなるだけでなく、手術時や抗がん剤治療で免疫が低下したときの感染予防など、さまざまな医療が困難になる。また、このような細菌が体内で増殖し、人体や動物、環境を通じて拡散されていく。個々人の抗菌薬の不適切な使用が世界的な社会問題にまでなっている理由がここにある。

一方、ウイルスは細菌の50分の1程度の大きさで、自身で細胞を持たず他の細胞に入り込んで生きている。病気を引き起こすウイルスとしては、インフルエンザウイルス、ノロウイルスなどが知られており、風邪(普通感冒)はさまざまなウイルスが原因となる。ウイルスには抗菌薬は効かない。

全国健康保険協会(協会けんぽ)がこの9月に公表した調査結果によると、風邪で医療機関を受診した患者に対して、効果がない抗生物質などの抗菌薬を処方されたケースは30%余り。2人に1人が処方されている都道府県がある一方で、4人に1人程度の処方にとどまっている都道府県も存在するなど、地域差も大きい。

また、AMR臨床リファレンスセンターの「抗菌薬・抗生物質に関する意識調査」によれば、「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」に対して、「あてはまらない」と正しく回答した人は23.1%、「あてはまる」と間違った回答をした人は64.0%にものぼった。ちなみに、EU28カ国の調査では、同様の質問に「あてはまらない」と正しく回答した人は43.0%で、日本ではまだ正しい知識が十分に広まっていないことが明らかになった。

厚生労働省は、AMRの普及啓発活動を推進するため、毎年11月を「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」と設定している。また、WHO(世界保健機関)により、11月18日を含む週が「世界抗菌薬啓発週間」として定められ、今年は11月18日~11月24日となっている。

AMRの広がりを防ぐためにも、風邪と診断されたら安易に抗菌薬を求めないことが重要だ。また、風邪にもかかわらず抗菌薬が処方された場合は、その理由と必要性を医師に改めて確認すること。そして、正しく処方された抗菌薬は、症状が回復したからといって途中でやめるなどせず、きちんと最後まで飲み切ることも覚えておきたい。

くしゃみ、鼻水、せき、たん、のどの痛み、発熱などの風邪の症状は体がウイルスと戦っている証。いわゆる風邪薬はその諸症状を和らげるためのもので、原因のウイルスを退治する薬ではない。日頃から手洗いやうがいを習慣化させ、風邪など予防可能な感染症にはかからないようにすることが一番だ。

医師・専門家が監修「Aging Style」

【参考】
AMR臨床リファレンスセンター
http://amr.ncgm.go.jp

全国健康保険協会:レセプトデータ等を活用した分析結果の公表について
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/home/g7/cat740/sb7210/201909kouhyou

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